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平成19年(2007).6月30日 掲載


総会を成功させる3つの条件

1 軽快なフットワーク(行動力)
2 綿密なネットワーク(組織力)
3 少々のヘッドワーク(理論武装)
  この頁は、3番目の「少々のヘッドワーク」のために書かれました。

「強くなければ、生きていけない。優しくなければ、生きる価値がない」
("If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.")

レイモンド・チャンドラー(Raymond Thornton Chandler (July 23, 1888  March 26, 1959) )の1958年最後の小説「Playback」の中で、主人公の私立探偵フイリップ・マーロウ(Philip Marlowe)が女性の依頼人に語った言葉



  社会病理と向き合う管理組合

 身勝手がはびこる「いちゃもん化社会」の到来  
   身勝手な客の理不尽な要求に耐え、自分の感情をひたすら押し殺して、相手に合わせた態度と言葉で対応する、きびしい自制心を求められる仕事を感情労働(頭脳労働、肉体労働に対して)といいます。 (2007.6.12朝日新聞「天声人語」から)
管理組合に対してもお構いなしに理不尽な要求をつきつける区分所有者がいます。
「管理費を払っているんだから」というのが彼らの言い分ですが、管理組合は賃貸の大家さんではない。筋違い。

  最近の風潮として現代社会に広がるモラルの低下が、社会病理としてクローズアップされています。(*1)
給食費未納問題を契機としてマスコミが取り上げた無責任・身勝手・理不尽な要求をする一部の親達の存在や、2007年4月17日伊藤長崎市長射殺事件を契機として、行政に対して不当で身勝手な要求を繰り返す行政対象暴力などの犯罪。
  更に、 2006年8月3日午後9時JR北陸線の特急「サンダーバード」車内で発生した21歳女性に対する強姦・傷害事件の犯人(植園貴光・解体工・36歳)が2007年4月に検挙され、事件時、車内にいた約40人の乗客が誰一人、制止も車掌への通報もしなかったことが社会に衝撃を与えました。
この事件は1964年キティ・ジェノビーズ(Kitty Genovese 28歳女性)がNY・クイーンズ地区(中級住宅地)で性的暴行を受け殺害されたとき、その惨劇を地区の38人が目撃していたにもかかわらず、誰ひとり助けに向かわず、警察にも通報しなかった事件を思い起こさせました。(「冷淡な傍観者」研究の契機となった事件。都市の社会病理としての「他者への援助行動の不在」)*2

 これらに共通の背景として、社会の都市化がもたらした「自己中心主義」と「他者への不感症・非介入」があります。
管理組合の運営でもモラルの低下は深刻な問題です。自己の利益だけを執拗に主張して他者の意見を聞き入れない身勝手な者、利益誘導を狙って組合運営に不当に介入する者、或は立場を悪用して利益誘導をはかる不当な管理者、そして多くの無関心層や「冷淡な傍観者」がいます。管理を難しくする現代社会病理は複合的になっています。

現代社会の管理組合は、これらの多くの複合的な社会病理と向き合わざるを得なくなっています。

 「総会進行シナリオ」のあとがきでも述べたように、これらの社会病理と向き合いながら、合法的、かつ合理的に総会を進行させるにはどうしたらよいかを、管理組合以外の総会(例えば株主総会)との類似点・相違点を比較しながら具体的に説明していきます。

 当然ながら、紛糾原因をすべて短絡的に社会病理ときめつけることは出来ません。総会は年に1度しか開かれないこともあって様々な意見が出され、理性的な対話であっても利害が直接絡む議題では時として紛糾することもあります。

 そんな場合でも、開催前に充分な準備を行い、総会では議長が議事整理権を適切に行使すれば、区分所有者と理事会が活発な議論を展開し、意見を戦わせてもなお秩序ある議事運営が可能であること、総会はコミュニケーションを通じての組合員の協同作業であり、管理組合の役員の視点からのみではなく、総会に出席する区分所有者側としても知っておくべきことがあること、などが解説を新たに書き加えた理由です。

 「議論とは、不同意の意見をもつ者同士が互いに争点を突き止めてそこを開いていくことで成立します」(「知の技法」より山影進「複数の視点-関係-」)東京大学出版会発行」)、
そのための理想的な対話を行う条件を満たす秩序ある議事運営のルールを明らかにすること、
それが本文の目的です。


管理組合総会のすすめ方


1.管理組合とはどんな組織でしょうか

 管理組合とは、ひとことで云えば「住まいを共同管理する社団」のことです。
「社団」とは組織化された人の集まりであり、「法人」とは法律によって、人間と同じように権利義務の主体となる資格(人格)を与えられたもののことです。
人間(法人に対して自然人という)は生まれながらに人格が与えられますが、法人は法人登記することによってのみ法人格を与えられます。法人でない社団又は財団で代表者又は管理者の定めがあるものを「人格のない社団」と云います。

 「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」という表現は、民事訴訟法29条、税法(道府県民税:24条1項4号、市町村民税:294条1項4号)などに見られます。
「住まいを共同管理する、人格のない社団」にも保存行為などの義務は社会の構成者として必然的に生じますが、そのままでは権利の行使ができないため、区分所有法で管理組合として権利義務の行使に当って契約の主体となりうるための手続きを規定しています。総会もその手続きに含まれます。

「人格とは」
 日本語の「人格」には「権利義務の主体」としての意味のほかに、人間性、高潔さなどの価値観のニュアンスを含んでいます。
例えば教育基本法第一条「教育は、人格の完成をめざし、」とあるように、ここでは「人格」を人間性の意味で使用しています。このように法律でも人格を「権利義務の主体」を意味する場合と、「人間性」をさしている場合の二通りがあることから、紛らわしさを避け、人間性などの価値観を入れずに、厳密に権利義務の主体を明確にする目的から、「人格なき社団」を「権利能力なき社団」と云うことがあります。例えば、日本郵政公社では、郵便貯金の名寄せを(1)個人(2)法人(3)権利能力なき社団・財団(4)任意団体や個人事業主の4区分で行っています。(3)の区分は「マンション管理組合や自治会などが該当する」と説明しています。郵便貯金では(4)の区分名義による取り扱いは拒否(解約)されます。

   管理組合法人とは、「住まいを共同管理することを目的とした人の集団で、法律によって権利義務の主体となることを認められた組織」です。同様に会社とは「利益を上げることを目的とした人の集団で、法律によって権利義務の主体となることを認められた組織」です。人の集団という組織から見ますと、構成メンバー(区分所有者と理事会及び株主と取締役)の関係は類似していますが、目的が違いますから、組合総会と株主総会とでは、権利義務の範囲と行使方法は違います。


2.区分所有者の権利にはどんなものがありますか

  利益を上げることを目的とする株式会社では「所有と経営」は分離していて、経営は経営者としての取締役に任せます。株主の権利(株主権)は会社から経済的利益を受ける権利(自益権)と会社の経営に参加する権利(共益権)を持っています。最近の銀行や大企業間の株式持合い解消などに見られるように、株主の多くは自益権(配当利回り)には関心を持たず、株式の売買益(キャピタルゲイン)だけに関心を持つ株主が増加している一方で、共益権を行使して株主として経営に参加しようとする動きも活発になってきました。

 建物・設備を所有者が共同で維持管理することを目的とする管理組合では「所有と管理」(権利と義務)は株式会社ほど、明確に分離してはいません。区分所有者が組合の運営に参加する権利は、同時に建物の保存行為に関係する放棄できない義務にもなっています。組合総会で行使する議決権は権利であると同時に管理に伴う義務です。

但し、個別の業務執行の意思決定を理事会で行うとした項目では、「所有と管理」は組合組織としての機能上、分離しています。権利と義務は企業の場合よりもはるかに複雑で入り組んでいます。理事が理事会に参加するのは権利ではなく、義務ですから、理事会では、規約上で理事会決議が可能な事項であれば、理事会招集通知にない事項でも決議できますが、総会では区分所有者に対して召集通知に記載のない議案は、動議の提出も決議もできません。出席していない区分所有者の権利を守るためです。
 区分所有者の権利では、そのほかにも組合総会招集請求権があります。これは組合の執行機関である理事長、監事、理事の役員が相互のチェック機能を十分に果たせない場合に備えて、区分所有者に認められた権利です。
また、区分所有者には、「書類閲覧請求権」も認められています。


3.管理組合の機関や組織はどうなっていますか

  区分所有法は管理組合の機関(組織)を二通りの形態で定めています。
(1)法人化していない管理組合の場合、「管理者」と「総会」のみ規定しています(ドイツ型管理と同じ)。
  「管理者」とは「組合を代表し、総会によって決定された意思を執行する者」のことです。 
  ドイツ型管理のことは「独の集合住宅」で述べています。

(2)法人管理組合の場合は、理事、理事を監督する監事、そして総会の3つが規定されています。
区分所有法において(理事、第49条)(監事、第50条)(事務の執行は総会の決議による、第52条)で規定されているように、理事は法人の事務を執行する機関であり、対外的には法人を代表する機関です。理事の代表権とは、理事が法人の名において他人と契約を締結すると法的には法人自体が契約をしたことになり、契約の効果(権利・義務)は理事ではなく法人に帰属するということです。監事は(1)法人の財産状況(2)理事の業務執行状況を監査します。会計監査だけではなく、理事の業務執行を監査する業務監査を含みます。

  国土交通省の標準管理規約第35条では、法人化していない(1)の管理組合でも法人化組合にならって 理事長、副理事長、会計担当理事、監事を定めています。標準管理規約自体には法的拘束力はありません。自分達の管理規約で(2)の法人組合と同じ機関を定めた場合にのみ自治規範として法的拘束力を持ちます。  




1.総会の権限はどこまでですか

 管理組合総会は集合住宅の区分所有者によって構成される最高意志決定機関です。
管理組合の業務を執行する管理者・理事・監事等の役員の選任・解任権をもつことが最高意志決定機関であることを端的に表しています。とは云っても、すべての事項を決定するオールマイティな権限をもっているわけではありません。

たとえば、規約で理事長は理事会による理事の互選と決められている場合は、総会で理事長を選任することはできませんし、理事会で決めるとしている業務執行の意思決定事項を総会で直接決めることはできません。
修繕工事の業者選定など意思決定の選択肢を示す上で、多くの検討事項や交渉事など長期間かけて綿密に比較検討する作業を、あらかじめ理事会や修繕委員会などで行う、「所有と管理(業務執行)の分離」は組織としての機能上、合理性があります。
最終的に総会で業務執行の意思決定の選択肢を示した上で、最高意志決定機関である総会の承認を得ることになります。


2.総会にはどんな種類がありますか

 総会には「通常総会(定期総会)」と「臨時総会」があります。
通常総会(定期総会)は年一回開催され(法34条2項)、定期総会で必ず行うものには共用部分の管理事項の報告と承認(事業報告及び収支決算報告・監査報告、次年度の事業計画及び収支予算)があります。
大規模修繕工事など、個別議案に時間をかけて区分所有者の合意を得る必要がある場合や、定期総会の開催まで待てない場合などは規約で定められた手続きに従って臨時総会を開催します。


3.総会で決めるのはどんなことですか

 総会決議には(1)区分所有法で定められた事項と(2)規約で定められた事項とがあります。いずれも普通決議と特別決議があり、4分の3以上での決議を要する特別決議の中には更に5分の4以上での決議を要する特殊決議があります。
区分所有法による総会成立と決議の要件は下表の通りですが、規約で要件と定数を変更できる事項もあります。

区分所有法による総会の決議事項
決 議 事 項 総会成立と決議の要件



建物の建替え決議(法62条) (*1)〜(*3)
規約の設定・変更・廃止(法31条)
共用部を著しく変更する大規模修繕 (*4)
敷地及び共用部分等の変更又は処分(法17条)(*4)
建物が大規模に滅失した場合の復旧決議(法61条)
義務違反者に対する訴えの提起(法57〜60条)
管理組合法人の設立・解散(法47条・55条)
その他総会において特別決議とすることとした事項
組合員総数及び議決権総数の各5分の4以上
組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上
同   上
同   上
同   上
同   上
同   上



[定期総会で必ず行うもの]
共用部分の管理事項の報告と承認
   事業報告及び収支決算報告・監査報告
  次年度の 事業計画及び収支予算
[必要に応じて行うもの]
役員の選任・解任
管理者の選任・解任
管理者の訴訟・追行
管理形態・管理委託契約の締結(*)
管理費・修繕積立金・専用使用料等の変更(*)
共同の利益に反する行為の停止等の請求
建物が小規模に滅失した場合の復旧
規約以外の諸規則(使用細則)等の設定及び変更・廃止
長期修繕計画の作成又は変更

役員活動費の額及び支払い方法
その他総会及び管理規約で総会普通決議とした事項  (*)これらの項目が規約に規定されている場合には、規約の変更にあたり、特別決議になります。

組合員総数及び総議決権の半数以上の
出席・出席議決権の過半数


同   上
同   上
同   上
同   上
同   上
同   上
同   上
同   上
同   上

同   上
同   上

(*1) 建物の建替え決議:
    区分所有者の4/5以上の賛成でマンションの建替えが決議できます。
(*2) 団地一括建替え決議:
    団地全体を建替えるときは団地全体の4/5以上と、それぞれの棟の2/3以上の賛成が必要です。
(*3)団地建替え承認決議:
   団地の一部を建替えるときは建替える棟の建替え決議(4/5以上)と、団地全体の3/4以上の賛成が必要です。
(*4)マンションの外壁を塗り替えたり、古くなった配管を取り替えたりする大規模修繕は、総会における過半数の賛成で決定できますが、共用部を著しく変更する大規模修繕は3/4以上の賛成が必要です。


4.総会の準備スケジュールは

総会の開催スケジュールはすべて決算日から始まります。
定期総会の総会日にいたるまでの流れの詳細は「事業年度終了後の諸手続き」を参照してください。

なお、株主総会や農協法、中小企業等協同組合法などによる団体の総会の場合は商法第247条の規定により決議の日から3ケ月以内に決議取消の訴えを提起することができることになっていますが(逆に言えば、決議の日から3ケ月過ぎても訴えがなければ、たとえ総会決議に瑕疵があっても決議は有効になる(瑕疵は治癒される))、区分所有法にはそのような規定はありません。


5.召集手続きはどのように行えばよいですか

(1)誰が召集するのですか(集会の召集権者)
  区分所有法では総会を開催できる人(召集権者)は管理者が選任されている場合は管理者(34条)であり、法人の場合は理事(47条9項)です。管理者が選任されていない場合には、次に述べる臨時総会の招集と同じく、所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者が、直接、集会を召集することができます。但し、総会の招集に必要な定数は、規約で減じることができます。(34条5項)つまり規約でハードルを低くすることは出来ますが、定数を増やして集会を開きにくくする(ハードルを高くする)ことは出来ません。臨時総会の召集の条件も同様です。

  臨時総会は区分所有法では所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有するものは管理者に対し、会議の目的事項(議案の要領、すなわ議題)を示して総会の召集を請求することができ、2週間以内に請求の日から4週間以内を会日(集会の日のこと)とする集会の召集の通知が発せられなかったときは、その請求をした区分所有者が、臨時総会を召集することができます。但し、請求に必要な定数は、規約で減じることができます。(法34条3項)

(2)召集の通知(総会案内)はいつまでに発送しなければならないのでしょうか
  召集の通知(総会案内)は、総会の日から少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項(議題)を示して、各区分所有者に発しなければならない(法35条1項)と定めています。1週間前にというのは発送規準で、到達基準ではありません。開催日より一週間前に発送ということは、通知を発した日と総会当日を除いて、その間に7日間必要ということです。

規約で通知期限を定める場合はこれよりも長く(例えば2週間前のように)定めることができます。5月28日が総会当日とすれば、5月13日に通知を発しなければならないことになります。
ただ通知すればよいというものではなく、召集通知書には次の内容が記載されていなければなりません。

(3)召集通知書に記載・添付するものは
 召集通知書には、総会の日時、場所、議題(会議の目的)を記載します。更に、共用部分の変更、規約の変更、共用部分の復旧等(特別決議)については、議案内容の通知が必要です。(法35条5項)
 特別決議でなくても、「議案書」は添付しなければなりません。欠席区分所有者が議決権行使書の賛否欄に賛否の記入をするためには、「議案書」は当然に添付されていて、その採否が判断できなければ、議決権行使書に記入は出来ないからです。出席者は、議題を事前に知ることにより、議論を深めることが出来ますし、出席できない方も通知された事項について賛否を決定することができます。法律では重要な議案つまり3/4以上の決議を要する特別決議の議案については、議題の具体的内容を記載した文書(即ち議案書)の添付が義務付けられています。

 1.召集通知書(総会開催案内)・・・総会の日時、場所、議題(会議の目的)を記載
 2.議案書・・・議題の具体的内容を記載
 3.出席通知書・・・出席する方、又は欠席した上で代理人指定か・議決権行使書のいずれかを把握
 4.委任状・・議決権(代理)行使を委任する代理人の指定(出席扱いとなります)
 5.議決権行使書・・通知された各議案についての賛否を通知(出席扱いとなります)

(4)召集通知書は誰あてに発送するのですか
  届出のあった区分所有者の住所あてに召集通知を出しますが、これを通知しない区分所有者に対してはその区分所有者の所有する専有部分が所在する場所あてに発送します。(法35条2項)
規約で定めれば、現に居住している区分所有者と、通知のない区分所有者(わかりやすく云えば行方不明者)に対しては建物内の見やすい場所に掲示して発送に代えることができます(法35条4項)
共有名義の場合は、共有者全員に通知する必要はなく、集会において議決権を行使するものが定められているときは(40条)その者に対して行い、その定めがない場合は、共有者のうちの任意の一人に対して通知するだけで足ります。


議題と議案はどう違う?
議題=会議の目的とも云います。「第一号議案平成○年度事業報告」、「第二号議案平成○年度決算報告」など
議案=議題の具体的内容を記述・または要約したもの。総会に「議案書」として添付する書類


(召集通知書の書式例)
区分所有者各位 (発送日時と組合住所、管理組合名、召集権者名を記載)
            第○○回定期総会召集ご通知 
 拝啓、平素は当管理組合運営にご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
   さて、当管理組合第○○回定期総会を下記の通り開催いたしますので、ご出席くださいますようご通知申し上げます。
  なお、当日ご出席願えない場合は、書面によって議決権を行使することができますので、お手数ながら後記の議案書をご検討くださいまして、同封の議決権行使書に賛否をご表示、または、委任状にご記名の上、平成19年5月25日(金)までに到着するようご返送いただきたくお願い申し上げます。          敬具
                     記
1. 日  時   平成19年5月27日(日曜日) 午前10時
2. 場  所   ○○県○○市○○町○○番地  当マンション1号棟 コミュニティホール
3. 会議の目的事項
     第一号議案 第○○期(自平成18年4月1日至平成19年3月31日)事業報告
     第二号議案 第○○期(自平成18年4月1日至平成19年3月31日)決算報告
     第三号議案 .理事及び監事改選の件 
     第四号議案 第○○期(自平成19年4月1日至平成20年3月31日)事業計画及び予算案の件 
  ◎当日ご出席の際は、お手数ながら同封の議決権行使書用紙を会場受付にご提出くださいますようお願い申し上げます。


(5)議決権

 議決権は各共有者の持分、即ち、その有する専有部分の床面積の割合による規定(法14条)から、規約に別段の定めがない限り、共用部分の共有持分割合の原則的算定方式とおなじく、各区分所有者の専有部分の面積比により決定する(法38条)ことになっていますが、実際にこれを行うことは現実的ではありません。そこで規約で専有部分の大小にかかわらず、1戸1議決権と定めるのが普通です。
 区分所有者の数は一戸の専有部分を数人が共有している場合でも、一人として数えます。(法40条)。
逆に、一人で数戸の専有部分を所有していても、区分所有者の数としては一人として数えます。

普通決議に限ってのことですが、規約で組合員数の過半数で決する旨を定めることができます。規約に定めがなければ、普通決議であっても、組合員数と議決権数の両方を数えなくてはなりません。
議事録には区分所有者総数、総議決件数、賛否の区分所有者数、議決件数を記載しておく必要があるからです。
管理組合の総会は株主総会以上に複雑な手続きになります。



1. 議長にはどんな権限がありますか

  議長には総会の秩序を維持し、議事を整理し、議事の進行を円滑にすすめるための「議事整理権」という権限があります。しかしながら、総会は区分所有者が集まって決議を行う合議体ですから、議事運営のすべてを議長の独断のみで行えるわけではありません。議場に諮(はか)り、その賛成を得た上で、行わなければならない事項もあります。

(A)議長が単独で判断できること
  (1) 議事進行に関すること
     1. 総会の開会と閉会の宣言する
     2. 質問者・答弁者を指名する
     3. その発言時間を制限する
     4. 議題・議案の審議の順序を変更する
     5. 決議事項を個別上程方式とするか、一括上程方式とするかを決定する
     6. 質疑を打ち切る
     7. 休憩する
     8. 採決の方法を決定する
  (2) 秩序維持に関すること
     1. 発言を中止させる
     2. 議長の指示を無視し、議場の秩序を乱した者を退場させる
(B)議長が単独で判断できないこと(議場に諮り、その賛成を得た上で行うこと)
     1. 議題・議案に関する修正動議
     2. 議長不信任の動議
     3. 総会の延期・続行の動議
(A)に関しては、参加者から動議の形で出されても、議長は議場に諮らずに、自らの判断で決定して構いません。勿論、これらに関して議場に諮ったうえで決定するのは構いません。(B)に関しては、必ず議場に諮り、その賛成を得た上で行わなければなりません。


2.  どんな場合に退場させることができますか

  発言や行動で議事を妨害したり、総会のルールを守らず、議長の制止命令も聞かないなど、総会の秩序を乱す者に対して、議長は「発言を中止してください。これ以上、不規則な発言を繰り返した場合には、退場してもらうことになります」など中止命令を出すとともに、退場の警告を発します。
2回以上、警告を行ったうえで、それでも中止命令に従わないときは、秩序を乱したことを理由に、その者の氏名を告げて、「退場してください」といって退場を命じます。それでも退場しない場合には、退去命令を拒否している者(即ち刑法上の不退去罪を犯している者)に対して、他の参加者と共に実力行使で議場から退去させることはできます。
但し、管理組合側に暴行罪が成立するような過剰な実力行使はできません。

  議長の議事整理権を公然と無視したり、大声で威嚇するなど実力で秩序を乱す者の出席が予想される場合には、組合員当事者同士の場合には冷静な対応は難しいので、大きな会社の株主総会に警備員を派遣して総会警備を熟知している警備会社に事前に警備員の派遣を依頼する方法もあります。
警備員は、腕をとる、身体を取り囲むなどの実力で会場から退去させることは可能ですが、抵抗する者に対しての過剰な実力行使はできません。
<実力行使が刑法35条(正当防衛)により罰せられないための条件>を述べた(昭和50年4月3日最高裁判所第一小法廷判決)では次のようになっています。
「逮捕をしょうとする者は、警察官であると私人であるとをとわず、
1.犯人からの抵抗を排除する目的で行使されるものであること。
2.社会通念上逮捕をするために必要かつ相当な限度にとどまっていること]

大企業の総会なら警察も要請に応じて株主総会に立会うことがありますが、管理組合の場合は要請しても警察が応じることはまずないと思います。忙しい、区分所有法のことは分からない、民事不介入・・などがその理由です。(指定暴力団が相手の場合なら、場合によっては、話を聞くこともある)

 予想もしていなかった議事妨害によって議事の継続が困難になった場合、議長は「しばらく休憩します」と休憩を宣言します。休憩の間、理事が集まって対応策を協議します。それが終ってから、「お待たせいたしました、それでは議事を再開いたします」と宣言して、総会を続けます。場合によっては、総会を延期することを議場に諮り、参加者の賛成を得たうえで、総会の延期を宣言します。 議事録には、○○号室○○氏の執拗な議事妨害によって総会の継続が困難になった為に、総会を延期することを決議したと明記しておきます。次回の再開の期日までの間に、区分所有者にその経緯を説明し、再開した総会で再び議事妨害が繰り返されないよう、対策を練ることになります。

 正当な理由もないのに、議長が退場命令を出したときには、その者の発言権・議決権行使を不当に制限したとして、総会決議無効の訴えが出される可能性があります。したがって「どのような経緯で退場命令を出したか、そして退場命令以外に秩序維持の方法がなく、客観的にもそれが正当なものであったか」が問われます。 そのことを客観的に説明できるような冷静な対応を行い、後日の紛争に備えて議事録に正確に記録しておきます。紛争になった時の対策はインターネットで「総会 議事妨害」で検索すれば、139,000件の関連記録(2007年6月現在)がでてきますから、参考にしてください。


3. 総会はどんな順序で進められますか

 管理組合総会は議長の開会宣言で始まり、閉会宣言で終わります。
(1)議長の開会宣言・・・議長就任のあいさつの後に行われます。
(2)議事運営のルールの説明・・・質問を受け付ける時期、発言の方法などを説明します。
(3)出席区分所有者数・議決件数の報告・・・定足数を満たしていることを明確にする。
(4)報告事項・・・議長または理事から議案書の事業報告書を報告する。
(5)議題の上程・・・議案を一つずつ上程しても、一括上程しても良い。個別上程方式をとるか、一括上程方式をとるかは諸事情を考慮して決める。
(6)議題・議案についての説明・・・議長または理事から議案書の貸借対照表・収支計算書などの財務諸表を説明する。
(7)監査人報告・・・監事が会計監査を報告する。
(8)質問状への回答・・区分所有者から質問状が出ているときは、ここで回答する。
(9)質疑応答・・区分所有者の質問に理事長、理事が回答する形で質疑応答となる。
(10)採決・・上程された議案をひとつずつ採決する。理事(役員)選任決議の場合、規約定数内の候補者数であれば、すべての理事候補者をまとめて採決しても良いが、個々の役員候補者ごとに採決した方が良いときもあります。
(11)議長の閉会宣言・・総会終了の宣言をする。

標準的な総会の流れは「総会進行シナリオ」を参照下さい。


4. 受付はどうしますか

(1)受付の役割とポイント
  株主総会の場合では、受付で株主及びその代理人のみを入場させ、それ以外の者は入場させないこが重要な意味を持ちます。もし誤って株主でない者の入場を許し、その者を議決に参加させてしまったり、逆に株主であるにもかかわらず、 出席を許さず、議決に参加せなかった場合、総会決議が瑕疵(欠陥)をもつとして決議無効の訴えを提起される可能性があるからです。管理組合の総会でも同様のことが言えます。

  しかしながら、右欄の解説で説明したように、「集合住宅の入居者の多くは管理組合という集団の目的と制度を知らずに入居し、総会を通じて集団の目的と制度を学んでいきます。総会は単なる人の集合体を 「実質的な組織集団」に変えるトレーニングの機会」という一面もあって、小規模の管理組合では、夫婦や家族などの居住者が参加する和やかな総会は誰にとっても望ましく、 あらかじめ議決する際に、議決のルールを説明すれば混乱のない議決も可能です。但し、規模が大きくなるとそうも行きません。また100戸以下の管理組合であっても、厳密に権利を行使できる者の確認をしなければならない状況になることもあります。

大規模の管理組合の場合

1)区分所有者の資格審査
  区分所有者の資格審査の簡単な方法は、区分所有者と面識のある者を受付において、区分所有者であるか否かを確認することですが、組合規模が大きくなると不可能です。また、区分所有者も常に変動しますので、中規模以上の管理組合では本文の組合総会召集通知書に例を示したように、 「◎当日ご出席の際は、お手数ながら同封の議決権行使書用紙を会場受付にご提出くださいますようお願い申し上げます。」として明記しておき、通知書の持参者だけを区分所有者と認める方法をとります。委任状の持参者も同様に認めます。本人が代理人ともども出席したいといってきても、 どちらか一方の出席を認めれば、他の方の出席は拒否できます。
また、区分所有者リストと照合し、運転免許証・健康保険証・身分証明書で本人であることが確認できた者、または氏名・棟番号・部屋番号・所有する占有部の数を申告させ、それが区分所有者リストと一致していたときに区分所有者と認める方法もあります。

2)区分所有者でない者の出席を認めてよいか
 これは参加者が決める問題ではなく、議長の議事進行に関する権限ですので、議長(理事長)の判断で傍聴の可否やマスコミへの公開を決めることができます。ただし、傍聴者は質問を含め、議事に参加することはできません。そのため、一般区分所有者と区別した傍聴席を設けた上で入場を許可すべきです。これらの者の議事への参加を認めてしまうと総会決議が瑕疵をもつことになります。
 修繕工事に関する質疑で調査診断を行った一級建築士などが総会に出席し、議長の求めに応じて発言するのは、議長の委任によるものであれば問題ありません。会計分野における会計士・税理士、法律分野における弁護士も同様です。

3)途中入場者について
 総会が開催中であれば、遅れてきた者であっても途中入場は認めなければなりません。また会場からいったん出た者の再入場も認めなければなりませんが、但し、頻繁に出入りして会場外の人間と連絡を取り合って議事に参加しているような者や、退場命令によって会場から出た者の再入場は認めなくても構いません。

4)カメラ・ビデオ・テープレコーダーなどの持ち込みについて
  これらの使用が総会の議事運営の妨げとなる場合は、その使用を禁止できます。これらの使用は出席者に心理的圧迫を与え、発言をためらわせる可能性があり、議事の妨げになることがあるためです。小型のボイスレコーダーをポケットに入れて使用するなどの場合は、これ見よがしに示威を与えるものでない限り、使用禁止にする理由は特にありません。


5. 議長の就任と開会宣言はどうしますか

 総会の議長は、議事運営についての強い権限を持っていますので、誰が議長になるかは総会の運営に重大な影響を及ぼします。管理組合は合議体ですので、合議体の慣行として、その合議体で選出された者が議長になるのが原則です(法41条)。従って議長には、原則として管理者(理事長)が就任します。 (規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除きます。)  同様に法人組合であれば代表理事(理事長)が就任します。但し、区分所有者が集会の召集を請求したにもかかわらず、管理者が総会を招集しなかった場合、または管理者がいない場合には集会を召集した区分所有者の一人が議長に就任します。(法34条4項、5項、41条)

 総会の冒頭に、議長に就任した理事長は、「おはようございます。理事長の○○です。規約第○条の定めによりまして、私が議長を努めさせていただきます。それでは、ただいまから○○管理組合第○回定期総会を開催いたします」と議長に就任した根拠を述べるとともに、自らが議長である旨を宣言してから開会宣言をします。
開会宣言をした時刻を記録しておきます。

 総会は、召集通知書に記載した定刻以前に開会宣言をしてはいけません。召集通知書記載の定刻ぎりぎりに来る者がいるからです。逆に、天候や交通事情などの事情で遅れる方が予想される場合などは15分程度を限度として、開会を遅らせても構いません。それ以上に開会を遅らせる場合には、既に待っている方の中で、その後の議事に参加できない方が出るなどの不都合が生ずることがあり、違法となることがあります。
  総会が終了したときには、閉会宣言を行い、いつ終了したかを記録しておく必要があります。


6. 出席区分所有者数と議決権数の報告はどのように行いますか

  管理組合の決議は、組合員数と議決権数の両方がその採否の規準となります。(「二重多数決方式」)
  召集通知書に添付して返送されてきた出席通知書、委任状、議決権行使書を整理し、あらかじめ出席区分所有者数、出席者の議決件数、委任状、及び議決権行使書による書面投票をした区分所有者数、議決権数をそれぞれ記載したリストを準備し、総会当日は受付で、実際に出席された方をリストに基いて確認しておきます。このリストを照合しながら、出席区分所有者数と議決権数の報告を行い、総会が成立したことを報告します。


7. 事業報告・決算報告・監査報告はどうしますか

  事業報告書、貸借対照表、収支計算書などの財務諸表を召集通知書に「議案書」として添付している場合には、出席者は既に読んでいるという前提に立ち、細かい数字について克明に報告する必要はありません。要点を簡潔に説明すれば充分です。
 会計報告を理事長が行うか、他の理事(例えば会計理事など)が行うかは議長(管理者・理事長)の判断によります。理事長が自分で行うのが原則ですが、他の理事に説明を委任しても構いません。質疑応答の回答者も、原則は管理者・理事長ですが、他の理事に説明を委任しても構いません。
質問者には、回答者を指名する権限はありません。回答者を指名する権限は議長だけです。
監査報告は監事が行います。


8. 議案の上程はどうしますか

議案の上程には「個別上程方式」と「一括上程方式」とがあります。
「個別上程方式」は、各議題・議案ごとに上程し、その審議と採決が終了してから次の議題を上程する方式です。
「一括上程方式」は、議題・議案を一括して上程し、すべての議題・議案の審議を行い、それが上程した後、各議題・議案の採決を続けて行う方式です。
「個別上程方式」は、質疑応答が各議題・議案ごとに行われますので、審議の対象が明確になります。 少人数の出席者で審議する場合にはじっくり審議できる利点がありますが、総会の議事を妨害し混乱させる意図を持った者が、執拗な質問を繰り返すなどの行為をした場合、議長は各議題・議案ごとに質疑を打ち切るタイミングが難しくなります。 さらに、多数の区分所有者が各々質問する場合、いくつかの議題・議案にまたがったものとなり、議題ごとに限定して質問を受け付けることが難しくなります。こうしたケースでは、「一括上程方式」の方が議事進行を円滑に進めることができます。


9. 議案の説明はどうしますか

 召集通知書に「議案書」を添付しておくと総会での説明が簡単にできます。
出席者に対して「書いてあることをそのまま読み上げても意味がありませんので、要点のみご説明申し上げます」と断った上で、簡略化して説明をします。 

説明が終ると、質問を受け付けます。

ご質問をいただく際のご注意点を申し上げます。
1.会議の目的たる事項に関しない質問は、お受けできません。
2.質問者は回答者を指名することはできません。回答者が必要な場合は議長が指名します。
3.区分所有者のプライバシーに関する質問、及び回答することが共同の利益を著しく害するような質問はお受けできません。
4.過去の総会での決定事項に関するご質問は一時不再理の原則によりお受けできません。
5.質問のある方は挙手をされ、議長の許可を得た上でご発言下さい。部屋番号とお名前を仰った上で、質問は簡潔に3分以内でお願いいたします。


10. 区分所有者の質問に対する説明義務はどこまでですか

質問に答えるときの注意点
 1. 回答すべき質問か回答しなくて良い質問かをふるいにかけて、答えなくて良い質問には議長の判断で回答を拒否し、回答者の指名も行うべきではありません。
 2. 質問は簡潔にさせます。ひとつの質問を3分以内、または5分以内と制限して構いません。
 3. 最も説明に適した回答者を指名するのは議長であり、質問者に回答者を指名させてはいけません。「質問者には回答者を指名する権限はありません」と拒否して結構です。
 4. 質問者が納得しなくても、合理的な説明がなされれば、それで質問に対する回答は終了したことになります。管理者(理事長)には区分所有者に対して説明義務がありますが、質問者が納得するまで説明し続ける必要はありません。客観的に合理的と認められる程度に説明すれば足ります。 質問者が納得しないときは、「ただいまの説明で、一般の区分所有者の皆様には十分ご理解いただけたものと考えます」など、十分義務を果たしたことを明確にした上で、次の質問に移ります。 但し、「一般の区分所有者の皆様には十分ご理解いただけた」と自信をもって云えるような説明をしてください。
間違った意見に対して、同調者が出る場合もあります。
 5.質問者が多数いる場合は、同じ人に何度もさせず、なるべく多くの人に質問させるようにします。
 6.過去の総会で否決または決定したことを再度、質問や修正動議で出されても、一時不再理の原則で再決議はできません。

下記の回答例をカードに書き留めておくと、いざというとき便利です。
答えなくて良い質問
 1. 会議の目的たる事項に関しないときは
   「ただいまのご質問は、本日の総会の目的とは関連がありませんので、回答は致しかねます」
   会議の目的たる事項とは、召集通知に記載された議題・議案のことで、決議事項だけではなく、報告事項も含まれます。議題・議案と離れた一般的・抽象的な質問には答える必要はありません。「会議の目的たる事項に関しない質問は、ご遠慮願います」と述べて回答を拒絶して構いません。
 2. 区分所有者共同の利益を著しく害するときは
  「ただいまのご質問にお答えすると、区分所有者共同の利益を著しく害することになりますので、お答えはご容赦願います」
  大規模修繕工事などの場合、各社から工事の見積をとって比較する前に、総会で予算額が公開されると、それに合わせられてしまいます。予算額の公開が必要な場合には、その危険性を理解いただいた上で、慎重に行ってください。
 3. 個人のプライバシーに関する質問には
   「個人のプライバシーに関する質問にはお答えできません。」
   総会は公開の場で行われますので、区分所有者個人のプライバシーに関する質問には答えてはいけません。
 4. 調査を要するとき
   「ただいまのご質問にお答えするには、資料(事実関係)等を調査しなければなりませんので、お答えはご容赦願います」  
   説明のために調査を要する質問について、その場で回答せよと云われた場合には、「調査を要する質問は事前に書面でご提出いただかないと、この場では回答することはできませんので、回答は拒否します」と述べて構いません。
 5. その他の正当な事由があるとき
   「ただいまのご質問については、回答すべきではない正当な事由がありますので、お答えは致しかねます」
   「もっぱら、議事の妨害を目的として為された質問」「関係者のプライバシーに関する質問」など
 6. 区分所有者の発言が意見表明にすぎないとき
   「ただいまのはご意見として承りました。それでは次の質問に移ります」
   質問の体をなさず、組合運営のあるべき姿や役員の責任問題に関する区分所有者の意見表明などには、説明義務はありません。


11. 事前に出された質問状への回答はどうしますか

 総会当日の質問で、回答するのに調査を要するものであったときには、管理者はその質問への回答を拒否できます。その一方で、区分所有者から総会前に充分な期間をもって書面で質問状が提出されたときは回答を拒否できません。
この質問状に対しては、質問を項目ごとに分類・整理して一括回答するようにします。一般の参加者にとっても、集約されたQ&Aの形で説明を受けたほうがわかりやすく、議論が深まります。この質問状への回答は、質疑応答の前に行います。
これから質問しようとする参加者が、その説明で納得する可能性がありますし、或は、その説明を受けて更に本質的な議論を深めることができるからです。

但し、後で述べますが、質問状のすべての項目に回答する義務はありません。単なる個人の意見表明には回答する必要はありませんし、個人のプライバシーに関することや、区分所有者の共同の利益に反することには回答できません。また、 質問状を提出した区分所有者が総会に出席して来なかった場合には、その質問に回答する必要はありませんが、他の参加者にとっても有益であると判断した場合には、用意した回答を公表して構いません。


12. 採決方法はどのようになっていますか

  管理組合の採決方法は「二重多数決方式」(注1)で、組合員数と議決権数の両方を数えなくてはなりません。
議決権数のみの多数決でよい場合というのは、(1)規約で多数決は議決権数のみで良いと定めている場合で、(2)例え規約でそのように定めてあったとしても、それが許されるのは普通決議だけです。特別決議については強行規定(法が優先し、規約で定めても無効) で必ず二重多数決方式を取らなければなりません。

そのために、総会準備として事前にやるべきことがたくさんあります。
 まず、総会開催前に区分所有者総数、総議決件数を所有者名簿から確定しておきます。
区分所有者総数は占有部の譲渡にともなって毎年変わることもありますので要注意です。
つぎに、召集通知書に添付して返送されてきた出席通知書、委任状、議決権行使書を整理し、あらかじめ出席区分所有者数、出席者の議決件数、委任状、及び議決権行使書による書面投票をした区分所有者数、議決権数をそれぞれ記載したリストを準備しておきます。 総会当日は受付で、実際に出席された方をリストに基いて確認しておきます。
受付では家族や夫婦の両方が出席したり、共有者全員が出席した場合などは、議決権を行使する方を事前に確認しておく必要があります。採決に当っては、このリストを照合しながら、組合員数と議決権数の両方を数えることになります。

(1) 採決に入るタイミング
    採決に入るのは、質疑が十分に行われ、大方の質問が出尽くしたと思われた時点で、議長による質疑打ち切りの宣言が行われた後です。総会が荒れた場合、このタイミングは非常に難しくなります。質疑打ち切りの宣言は議長の議事整理権に属するもので、議長の判断のみで出来ます。

(2)採決の方法
  採決は拍手、挙手、起立など、どんな方法でも構いません。但し、特別決議の場合は、賛否における区分所有者数と議決権の数を議事録に記載する都合上、挙手以上の方法によります。その区分は次によります。
(2-1)明らかに賛成多数または全員賛成が見込めるときは「拍手」や「賛成」などの発声を受けて議長が「賛成過半数をもって可決(承認されました」旨の可決(承認)の宣言をして構いません。
(2-2)一部に反対がある、またはその数が問題になる特別決議の場合は、「挙手」か「起立」による「決」をとります。
(2-3)建替え決議の場合は、反対者の氏名を記録しておかなければなりませんので、誰が賛成し、誰が反対したかを記録しておきます。

  以上の採決の後に、議長は「賛成過半数をもって、(或は4分の3以上の賛成をもって)可決(承認)されました」旨の宣言を行います。
採決のあと、賛成、反対の数を明確にしろと区分所有者から要求される場合がありますが、普通決議の場合であれば、議長としては、議案の可決に必要な賛成があったか否かを明確にするだけで良く、それぞれの票数を明示する必要はありません。但し、特別決議の場合には、その数を議事録に記載しなければなりませんので、参加者から要求がなくてもそれぞれの票数を明示することになります。

(注1)
「二重多数決方式」
国内法で二重多数決方式をとる例は区分所有法以外では余り例がありません、国際法ではたとえば、2007年6月21日、ブリュッセルで開催されたEU首脳会議でEUの新基本条約について、議長国のドイツは二重多数決方式を提案しています。「加盟国数の55%以上が賛成し、賛成国の人口がEU総人口の65%以上なら可決」とする内容です。管理組合の性格はEUに近い(?)のかも。


1
1.総会が終ったら何をしますか

総会終了後の事務
(1) 議事録の作成 
   議事録には、開催日時、区分所有者総数、総議決件数、議題・議案の要領、報告事項の概要、重要な質疑応答、採決の結果、賛否の区分所有者数、議決件数を記載した上で、議長並びに出席者が記名押印します。

(2)理事会の開催 [議案]
   理事長(代表理事)、副理事長及び会計理事等の選任
   新旧役員による 事務引継ぎ
   理事会議事録の作成及び議長並びに出席理事の記名押印
(3)法人組合の場合は法人代表理事変更登記を法務局に提出(総会後2週間以内)
(4)県税事務所・市区町村納税窓口への代表理事変更届提出
(5)市(区)役所の資源ごみ回収協力団体登録事項変更届出書
(6)区分所有者へ総会決議事項を通知します。理事会での代表理事の選任、各理事の分担決定もあわせて通知します。
(7)町内会・自治会への代表理事変更の通知 (地域コミュニティとの円滑な連携のため)
(8)契約損害保険証書の代表者変更手続き
(9)定期保守業者(EV.防火設備、簡易専用水道の各保守業者)への通知  
(10)会計帳簿、議事録等の閲覧請求のための備え置きとその場所の掲示


     − 結局のところ、民主主義は合意に基くものだが、合意を形成するわけではない。また、それは国民の間にかなりの共通点があると想定しているが、共通点を作り出すわけではない。そして、民主主義がうまく機能するのは、分配できる資源が増加し続けていて、ゼロ・サムやマイナス・サムの選択を迫られないときなのだ。 しかし、今日、民主主義はこうした条件を何ひとつもっていない。− Lester C.Thurow([The Future of Capitalism ]Chapter 13 : Democracy versus the market .−
( マサチューセッツ工科大学 経済・経営学教授 レスター・C・サロー著 山岡洋一/仁平和夫訳TBSブリタニカ発行「資本主義の未来」第13章「民主主義」対「資本主義」 P325 ) − より引用

   現実に対して無知な者ほど紋切り型の決まり文句を使います。「総会は民主主義に則って行わなければならない」というのは勿論正しい。しかし、管理組合運営の実務に携わったことのない者に、「民主主義の概念と、民主主義が現実にどのようにして存在するかという事の間には大きな溝が存在する」という事を理解させるのは難しい。管理組合運営の実務では、社会制度のもつさまざまな歪(ひずみ)に直面する。 それを外側から設定された倫理的な単一の価値の視点から捉えても、単なる自己満足や言葉の遊び、観念論に過ぎず、何の解決にもならない。現実の問題ではそのコミュニティが持つ内在的な価値によって判断することが問題解決の重要な手法となってくる。そのコミュニティが持つ内在的な価値というものは、生活弱者の視点でコミュニティの内側から謙虚さをもって見つめることでしか得られないものなのかも知れない。
フイリップ・マーロウの科白をプロローグで紹介したのは、そのすべてを一言で表しているように思えたからです。
(著者あとがき)


    左の本文では管理組合を法律・経済活動の内側から見ているのに対し、この解説欄では社会的存在としての人間行動を対象とする社会心理学の視点で人間集団を外側から見ていきます。 社会心理学では人間行動の対象を次の6つのレベルに分けていますが、ここでの対象は3と4に限定しています。
1. 社会状況における個人
2. 個人と個人の関係、すなわち対人行動
3. 個人の集まりが一つのシステムとなった集団
4. さらに集団の規模が大きな組織体
5. 不特定多数の大集団、集合行動
6. 社会的活動の成果としての文化、流行、消費者行動

「管理組合っていったい何だろう?」と悩んだとき、社会心理学の視点で見ると、説明のつくことがあります

(*1) 現代社会病理とは何か
 社会の安全、安心を損なう現象や、社会モラルからの逸脱行為(自殺、ひきこもり、少年非行、不可解な犯罪、児童虐待、ホームレスの増加など)のこと。いつの時代にも、殺人・強盗・強姦など各種犯罪、物乞いなど社会病理は存在していましたが、かつては存在していなかった現象を現代社会病理といいます。

(*2) 冷淡な傍観者 (Bystander "Apathy")

 この事件は全米に衝撃を与え現代社会のモラルや価値観の低下、NY市のような大都会の人々に見られる冷淡さにメディアの関心が集まりました。

社会心理学者のラタネとダーリー(Latane, B., Darley, J.)が冷淡な傍観者 (Bystander "Apathy")の存在についてさまざまな実験を行い、研究を進めた結果、緊急事態における参加者の反応はその人数の大きさが強く影響することを明らかにしました。

 つまり、グループの人数が2〜3人のときは全員がすぐに援助行動を行うのに対し、6人のグループでは38%の参加者が何もせず、また援助行動への時間もかかるようになったのです。傍観者の数が多くなると一人ひとりの責任が分散するため、援助が行われにくくなることを「傍観者効果」(Bystander effect)と呼びました。その後、 多くの社会心理学者によって、援助行動の抑制と促進のしくみが明らかにされていきました。

 自発的援助行動ではなく、仕事としての義務を伴う行動でも、集団が多数の場合には手抜きが行われることをリンゲルマン効果といいます。

「リンゲルマン効果」(Ringelmann effect)
ドイツの心理学者リンゲルマン( Maximilien Ringelmann (1861-1931) )は、1913年、ストレインゲージ(圧力計)に取り付けたロープを引っ張る実験で、2人で引っ張った場合は期待値の93%、3人では85%、8人では49%の力しか発揮していないことを発見します。つまり大勢になるほど、個人は怠ける(loaf)ようになります。 これは社会的手抜き効果("social loafing").、ぶらさがり現象、ただ乗り現象などとも言われます。

  企業合併の記者会見で、経営者はよく、”シナジー効果(相乗効果)を発揮して”と言いますが、このシナジー効果(synergy effect)の逆がリンゲルマン効果です。

都市生活と社会病理

  都市の特徴のひとつは「匿名性(anonymity)=お互い見知らぬ人々であふれ、お互いが孤立(isolatioin)していること、もうひとつの特徴が「過密性(crowding)=クラウディング」です。

込み合っているために、行動が制限され、プライバシーが侵されていると感じたり、状況のコントロールを失ったと感じ、怒り、苛立ち、不安、絶望、自棄を引き起こすことがある反面、逆に過剰な過密性の状態、即ち盛り場やイベント、お祭りなどの状況では匿名性が過剰になり、群集心理の特徴(被暗示性、無名性、等質性、無責任性、衝動性、力=エネルギー感覚の実感)が見られます。

都市生活者の行動は、次の3つの心理的合理化の表れと見ることができます。

(1)他者への無関心、不干渉の形をとり、援助行動を行わない傾向を生み出す。
(2)責任の所在が不明になる。自分の責任ではなく、誰かがやるだろうと思い、結局誰も行わない。
(3)匿名性ということは、やるべきことをやらなかった場合に、他者から責められるという感覚を持たないで済む

また、匿名性は反社会的行動への抑制が弱まり没個人化(deindividuation=群集の中の一人)の感覚を生む。犯罪行動が起こりやすくなる。

クラウディングを感じたときに人がとる行動は次の5つのパターンに分類されます。

(1)主張する(抗議、意見を云う、環境を変える)
(2)行動の完遂(さっさと目的を達成し、立ち去る)
(3)心理的撤退(クラウディングをないものとして無視するために他者への無関心、不干渉、匿名性への逃避行動をとる)
(4)物理的撤退(目的の達成を諦め、そこを立ち去る)
(5)適応(周囲の人と協調して、その場でできる最も有効な手段をとる)

私達は通常、時、場所、対象、感情に応じて上記の5つのパターンを使い分けています。

ミルグラム(Stanley Milgram)が示した過剰負荷モデル(overload model)によれば、過剰負荷状態とは、「同時または連続して提示される一連の入力を人間というシステムが処理しきれない状態」のことで、この状態にある都市生活者は次のような忌避行動を取ることで過剰負荷状態に適応しようとします。

(1)情報の優先順位を決める(職場・友人・家族などの特定の関係に結びつく情報を優先し、残りのものは無視する)

(2)望ましくない入力を遮断する(他者の要求に冷淡な態度をとる)

(3)接触の方法を制限する(中身ではなく、形式的手続きの段階で、要求を拒否する)

(4)他者に労力を押し付けたり、責任を転嫁する。

 以上述べてきたように、管理組合の無関心層はミルグラムの云う過剰負荷状態における都市生活者の適応として説明することができます。その背景に、匿名性を挙げることができます。
無関心層を減少させるには匿名性の打破が鍵となります。

 広報をこまめに発行して情報を共有し、帰属意識を高める、総会以外に親睦のための会合や、避難訓練、消防訓練などあらゆる機会をとらえて、お互い顔見知りになれる機会を増やすなど、身の丈(組合の規模)にあった手段はいくつかあるはずです。

 最近は管理会社も組合向けに広報出版活動やインターネット事業を展開していますが、残念ながら、潜在需要である都市生活者の匿名性の打破という本質ではなく、「顧客の囲い込みを狙い、かつサービスの付加価値を高める」という目先の利益を追求する事業戦略上の手段であり、組合自身が行う活動とは目的及びその内容において質的に異なります。

つまり、業者が行う「サービスの商業化」事業と、管理組合が自分達のために行う事業は同種であっても同質ではありません。
これは委託管理と自主管理における本質的な違いでもあります。


    理想的な対話を行う条件

ユルゲン・ハーバマス (Jürgen Habermas)フランクフルト大学名誉教授は『コミュニケーション行為の理論』(The Theory of Communicative Action 1981年)の中で、「コミュニケーション行為(人と人が相互の了解や合意を追求し、達成すること)は他人の言うことを理解したり、より有力な論拠を甘受したり、そして意見の一致を得たりする能力を蓄えることが、各人の相対的な立場を認めながらも、普遍的な社会批判の根拠を成し、より民主的な社会伝達や交流を可能にする」と説き、

更に
討論が倫理的に正しく行われるためには、

第一に、説得力のある、矛盾しない議論が行われ、用語が首尾一貫した意味として使われること、

第二に、参加者が自らの私的利益や即時的状況という立場から身を引いて、対象となる問題について客観的に思考すること、

第三に、参加者が強制されずに自由に対等に討論に参加できること、

であるとしました。


集団の意味と類型:

  集団には組織集団と未組織集団があります。社会心理学では「集団」とは組織集団を意味し、未組織集団は車内に乗り合わせた乗客などのように「単なる人の集合体」または群集のことです。
集団には次の特質が備わっています。

(1)共通の目標を持ち、
(2)持続的な相互干渉があり、
(3)成員間に一定の地位と役割の分化があり、
(4)共通の規範が成員の行動を統制し、
(5)これらの結果、成員間に一体感(「我々」という感情、We-feeling)が関係している。

集団に属して抱く「我々」という感情の度合いは、下記の集団の類型で異なります。

公式集団(Formal group):公の組織や規則など制度的に依存し目的別に編成される集団

非公式集団(In-formal group):個人の自由な感情や欲求によって自発的に形成され、各人が人間的関係によって結びついている集団

所属集団(Membership group):名目的にも形式的にも自分が所属している集団

準拠集団(Reference group):実際にその集団に属していなくても、自分の態度や行動がそこから影響を受ける集団のことで、いわば、個人が心理的に自分を関係付けている集団

集合住宅の入居者の多くは管理組合という集団の目的と制度を知らずに入居し、総会を通じて集団の目的と制度を学んでいきます。

総会は単なる人の集合体を「実質的な組織集団」に変えるトレーニングの機会でもあります。

(1)役割と地位の分化:

 集団が形成されると、成員間に相互作用が見られ、各人の能力と特性に応じて、各成員に一定の役割(role)とそれに対応する位置(position)とが与えられるようになります。
位置とは、個人がその集団の中で占める一定の場所であり、それが成員間によって価値の重さで序列付けられ、認知されたものが地位(status)であり、役割は、その与えられた地位の中で、それをなすことが他者から期待され、何らかの程度で固定化されている行動様式です。役割と地位の分化に対応する一定の相互作用が集団内部で安定性を獲得した時点で「集団が構造化された」といいます。

 管理組合は法律によって外側から構造化された集団であることを形式的に担保されているに過ぎず、実際に集団内部の各成員間の役割とそれに対応する位置を決定し認知していく作業は現実への対応の中で、民主主義に則って管理組合自ら構築していくという難しい課題を構造的に抱えています。

(2)集団の機能:

 集団には二つの主要な機能があります。

1. 集団維持機能(Maintenance M機能):
  集団を維持し強化しようとする機能。凝集力(Cohesiveness=成員自ら進んで集団にとどまろうとする内からの力)はM機能の基礎。

2. 集団目標達成機能(Performance  P機能):  問題解決機能、すなわち集団のもっている目標や課題を遂行し、実現していくための機能で、モラール(=目標達成に強く結集し協力していく度合い、一体感)のこと。

 M機能とP機能のどちらを優先するかで、リーダーシップの類型が決まります。
P型の場合、仕事中心主義で、成員への配慮が薄くなりがちです。M型の場合、目標達成への活動よりも、むしろ成員間の調和やまとまりに関心がむけられます。最も望ましいのが、バランスの取れたPM型です。

とはいっても私達は欠点だらけの生身の人間ですから、当事者には開き直る覚悟も必要ですし、ある時期はP型で、また、ある時期はM型でというやりかたもあります。余り、類型にこだわる必要はありません。

民主的ということ:

  発言を制限するのは民主的ではないといわれることがあります。

 総会を民主的に行う為に総会の秩序を乱す者の発言や行動を制限し排除するのですから、その主張は本末転倒です。

  「民主的」という言葉の真の意味を理解していないか、又は民主制という基本的原理に対する狭い理解に基く教条主義が基本にあります。
(教条主義:状況や現実を無視して、ある特定の原理・原則に固執する応用のきかない考え方や態度)

実際の管理組合運営に携わったことのない自称「専門家」が好んで法律の条文を振りかざすのは教条主義とは云いません。現実に対して単に無知なだけです。

「民主的」という言葉は、使った者が民主的であるかのように、云ったもん勝ちで使われます。北朝鮮も正式国名は朝鮮民主主義人民共和国(Democratic People's Republic of Korea)ですが、誰も北朝鮮を民主主義国家とは思わないでしょう。民主制を破壊する側から、自分達が民主的とは云って欲しくない。

  私達が目指す民主主義は、良識ある対話を通して大多数の合意に至る合意形成型民主主義(コンセンサスモデルとも言われる)であり、日本の国会の強行採決に見られる単純多数決型民主主義ではない。

  「個人が等しく平等であること」を前提に、参加者に制約を設けない素朴な民主主義は現実社会では存在していません。例えば区分所有法では共同の利益に反する行為をした者には、59条の競売請求(けいばいせいきゅう)即ち、その者の所有権を剥奪することも認められています。全体の利益は個人の利益よりも優先する。理性的な対話ができない者は民主制のルールでは排除される。 画一的平等も存在しない。現実を見ない、狭い理解に基く幼稚な教条主義でしかない。

  古代ギリシアの民主主義の起源は古代ギリシアの都市国家(ポリス)にあるとされ、古典ギリシア語のデモス(demos、人民)とクラティア(kratia、権力・支配)をあわせたデモクラティア(democratia)がデモクラシーの語源です。

民主主義はデモクラシー(democracy)の日本語訳で、君主に対応する概念として「民主」という概念を設け、人民ないしは国民が、支配の正統性および実際の政治権力の双方の意味を含む主権を有するものとして、為政者たる「民主」と、被治者たる人民が同じ(治者と被治者の自同性)であるとする政治的な原則や制度を言います。

 民主主義の定義は沢山あります。(草の根民主主義 、組合民主主義 、産業民主主義 、社会民主主義 、自由民主主義 、大衆民主主義、ブルジョワ民主主義 、プロレタリア民主主義・・・等々)いずれも、民主制に参加できる者を制限し規定する区分です。

集団の影響

(1)規範の形成
 アメリカの社会学者シェリフ(MuzaferSherif)が行った規範の形成に関する実験で、集団が未経験で不安定な状況におかれると、成員は自分の判断のよりどころがなくなり、不安となるため、集団全体の規準や他者のそれに近ずこうとし、その結果、集団としての一つの規準が形成されてくることを示しました。

 この場合、判断の基準となるものを準拠枠(frame of reference)と呼び、この準拠枠が成員によって共有されてはじめて規範(norm)が成立します。
  つまり、規範とは、社会や集団の成員によって支持され、それを維持し守るために、成員として取るべき態度や行動が期待される標準的な行動様式のことを言います。

 一般区分所有者はこの準拠枠である管理組合の規約を隅々まで理解しているわけではないので、総会では、懇切丁寧に、その規約の背景から説明しなければならない局面がでてきます。単に規約に規定されているからと説明を突っぱねると、逆に反発を招いて信頼の回復に思わぬ時間がかかることがあります。「急がば回れ」で懇切丁寧な説明が、結果的には良い結果が得られるようになります。

(2)同調行動
 明らかに誤った意見なのに同調する者が出て驚くことがあります。人はなぜ、誤った情報に同調するのでしょうか。

 それは、説明の仕方に原因があります。

ドィッチュとジェラード(M.Deutsch & H.B.Gerard)は、集団が成員に与える圧力を情報的影響(informational influence)と規範的影響(normative influence)の二つに分類し、その効果の相違を明らかにしました、

  情報的影響とは自分の判断や行動が正しいかどうかを直接事物に当って確かめる物理的実在性による検証ができない場合に、妥当な判断のよりどころを他の人々の意見や行動に求めようとするもので、これを社会的実在性(social reality)と呼びます。
それに対して、規範的影響とは、他の人々がその判断を選ぶように見えざる圧力をかけているように感じることから生じるものです。

情報的影響では多数者の意見に従っていれば間違いないだろうということで同調するので、心理的抵抗も少ないのに対し、規範的影響では、表面的には集団に合わせているように見えるが、実際にはやむを得ず自分の信念や意見を曲げて同調しているので、内面的には大きな抵抗を感じます。これが追従(compliance)です。強制的に追従を強いると逆効果になります。

説明に当って懇切丁寧な説明をしなさいというのは、心理的に情報的影響を及ぼすようにしなさいということであり、、規約にあるから従えという言い方は、心理的に規範的影響を与えようとするものだから、逆効果になるのです。

説得の技術
人はどのようにして態度(attitude)が形成されるかを研究したクレッチ(D.krech.etal)によれば、

(1)自分の欲求を充足してくれる対象や手段には好意的態度をとり、反対に、疎外する対象や手段には非好意的態度を形成する

(2)情報を手がかりにしてその対象についての態度を形成する。偏った情報からは偏見が生ずる

(3)態度形成は自分が所属する集団の情報の質と量や集団成員が持つ態度の特徴に影響される。自分の行動のよりどころとする準拠集団(reference group)のほうが名目的所属集団よりも大きな意味をもつ。

(4)上に述べた3つのほかに個人的特性personarity)外向的か内向的かなどの特性によって認識も態度も異なることを示しました。

上手な説得の仕方

(1)送り手の要因:
情報の送り手側の重要な要因は信憑性ということです。つまり、受手側に情報の送り手がどれだけ信用されているかということであり、信憑性の内容は専門性(その情報に関して専門家であると認められる程度)と、信頼性(受け手側から見た、送り手の情報提供の意図の誠実さの程度)から成り立っています。

 ここで注意すべきは、専門性についてです。高い専門性をもった送り手の情報は初期の段階では影響力が高く権威の効果もありますが、それらは時間の経過に従って低下していきます。

 逆に専門性の低い送り手による情報(説得)では、提示直後には低かった説得効果も時間の経過に従って高まることが知られ、これをスリーパー効果(sleeper effect)と呼びます。どちらも結局は情報の内容自体で評価されていくからです。専門性の権威に頼るより誠実な姿勢のほうが説得には有利です。

  信頼性に関しては送り手の説得意図が見え見えの場合は、受け手側には防衛的心構えができてしまい、素直に耳を傾けなくなるので、説得の効果は弱くなります。

(2)一面提示と両面提示
  一面提示とは提唱する立場を支持する議論のみの提示であり、両面提示とは、一面提示の議論のみならず、反対の議論も提示する方法を言います。
 受け手と送り手の意見が対立関係にある場合は両面提示に効果があり、受け手と送り手の両者の意見が一致している場合には一面提示が効果が大きいのですが、一面提示は逆宣伝の攻撃にさらされた場合にはもろいとされています。

(3)説得への抵抗
 人には基本的に自由でありたいという心理があり、自由が脅かされると感じた場合には自由回復への機運から説得に対する反発が生じてきます。これをブーメラン効果(boomerang effect)といいます。必要以上に相手に圧力をかけず、相手の意思決定を尊重する姿勢がとても大事です。
  これから勉強しようと思っていた矢先に母親から「早く勉強しなさい」と云われて、とたんにやる気を無くす子供の心をブレーム(J.W.Brehm)の心理的リアクタンス(反発)理論(psychological reactance theory)で説明することができます。


『群集心理』The Crowd、A STUDY OF THE POPULAR MIND」フランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボン(Gustave Le Bon 1841.5.7〜1931.12.13)1895年の著 群集心理の特徴とその功罪を鋭く分析、個人は群衆の中において、その匿名性から生じる気安さと責任のなさとから、自主性を失い、知的判断のレベルが下がり、外部からの暗示と伝染に動かされて、本能の衝動に駆り立てられ、反社会的行動に走る。この特性からル・ボンは群衆を操縦する方策を示唆する。  群衆は,ただ過激な感情にのみ動かされるのであるから,その心を捉えようとする弁士は,強烈な断定的言辞を大いに用いねばならない。誇張し、断言し、反復する事,そして,推論によって何かを証明しようと決して試みない事」。
  この書はファシズムの台頭において,ヒットラー、ムッソリーニ、そしてロシア革命においてポルシェビキによって、民衆支配のテキストとなりましたが、その手法は今日でも見られます。短く、ワンフレースで、繰り返し、断定的に、伝えること。これが大衆操作の極意です。思いあたること、ありませんか?

『大衆の反逆』(La rebelión de las masas)』オルテガ・イ・ガセット(Jos´e Ortega y Gasset スペインの哲学者1883,5,9-1955,10,18)の1930年の著 オルテガが言う群衆とは、権利のみを主張し義務を果たさない人々であり、成熟したデモクラシーと科学技術の中で育った彼らは、自分は何でもできるという万能感、自律的であるという錯覚を持ちつつ、自己閉鎖的な人間へと化していった。その中で我々はいかに生るべきかを示しています。

コミュニティ心理学

人間を社会的存在と捉えるアプローチの方法には社会心理学のほかに、社会学、文化人類学、社会人類学、環境心理学、家族心理学、組織心理学、社会福祉学、社会精神医学、地域精神医学、そしてコミュニティ心理学などがあります。
この中で、特に精神疾患に関する公衆衛生の面で実践されてきたのがコミュニティ心理学です。

1963年、ケネディ大統領が「精神障害者と精神薄弱者に関する教書」を発表したことを受けて議会で「地域精神保健センター法」が成立し、全米に精神保健センターが設立され、それらに従事する心理臨床家が1965年ボストンで会議を行った中でコミュニティ心理学が誕生した経緯があります。
  日本の精神疾患に関する公衆衛生の公的制度は、「立ち遅れている」なんてレベルではなく、皆無に等しい。

精神科医による患者個人への心理療法がパーソナリティの再構成または、行動の修正をアプローチ目標としているのに対し、住民コミュニティ全体を対象とし、社会体系の変革による個人と社会システムの間の適合性を改善することを目標とするコミュニティアプローチこそ、急増する人格障害者問題にとって急務です。

  騒音おばさん問題など、おかしな特定個人の問題としてではなく、公衆衛生モデルとして対策しなければならないのですが、未だ道遠しです。

管理組合総会のすすめ方 目次

社会心理学からの視点

総会を成功させる3つの条件
(まえがき)  社会病理と向き合う管理組合
管理組合総会のすすめ方
1. 管理組合のしくみ
   1. 管理組合とはどんな組織でしょうか
   2. 区分所有者の権利にはどんなものがありますか
   3. 管理組合の機関や組織はどうなっていますか
2. 総会のしくみ
   1. 総会の権限はどこまでですか
   2. 総会にはどんな種類がありますか
   3. 総会で決めるのはどんなことですか
   4. 総会の準備スケジュールは
   5. 召集手続きはどのように行えばよいですか
   (1)誰が召集するのですか(集会の召集権者)
   (2)召集の通知(総会案内)はいつまでに発送しなければならないのでしょうか
   (3)召集通知書に記載・添付するものは
   (4)召集通知書は誰あてに発送するのですか
   ----(召集通知書の書式例)---
   (5)議決権
3.総会のすすめ方
   1. 議長にはどんな権限がありますか
   2. どんな場合に退場させることができますか
   3. 総会はどんな順序で進められますか
   4. 受付はどうしますか
   5. 議長の就任と開会宣言はどうしますか
   6. 出席区分所有者数と議決権数の報告はどのように行いますか
   7. 事業報告・決算報告・監査報告はどうしますか
   8. 議案の上程はどうしますか
   9. 議案の説明はどうしますか
   10. 区分所有者の質問に対する説明義務はどこまでですか
  11. 事前に出された質問状への回答はどうしますか
  12. 採決方法はどのようになっていますか
4.総会終了後の手続き
   1.総会が終ったら何をしますか

現代社会病理とは何か
冷淡な傍観者
都市生活と社会病理
理想的な対話を行う条件
集団の意味と類型
(1)役割と地位の分化
(2)集団の機能
民主的ということ
集団の影響
(1)規範の形成
(2)同調行動
説得の技術
上手な説得の仕方  
コミュニティ心理学

平成19年(2007).6月30日 掲載

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