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付録8 利害関係者の権利と義務 - 紛争解決事例  (ANNEX VIII )
Rights and obligations of interested parties - some examples of possible disputes and solution

 はじめに

 ※免責事項
   このマンションNPOのHpでは国連発行文書(UNITED NATION PUBLICATION-ECE/HBP/198)の
   内容をご紹介しています。同文書の日本における公式の文書ではありません。
   また文中の翻訳表現は権威ある公式の翻訳ではない事をお断りしておきます。(マンションNPO)

利害関係者の権利と義務 - 紛争解決事例

 共同住宅の構成員である区分所有者の所有権は、 同時に利害関係者を巻き込んで衝突と紛争の原因にもなっています。

紛争解決事例のいくつかをご紹介します。

法的な契約関係が基礎になっている紛争の解決は国内法の枠組の中で そしてまた、共同住宅内部における契約と協定の中で統合(integrated)されるべきです。

1. 管理費の滞納
 管理組合は、滞納者の所有権に先取特権(lien)を設定することができます。
先取特権は所有者の管理費負担分とその他の経費及び徴収経費の回収のために設定されます。
先取特権の設定後6ケ月以内に実際の回収のための法的措置に入らなくてはなりません。

2. 専有部分の手入れをしない所有者
 管理組合は、専有部分に立ち入る権利を与えられています。 必要な維持保全が所有者の責任できちんと為されているかを調査します。 この費用は、上で述べた先取特権の回収すべき費用の中に含まれます。

3. 所有者の義務と責任
 区分所有者は誰でも、自身の所有する住戸や装置、 機器などへの、適正な維持保全が為されないことによる経済的損失に対して、 他の所有者や管理組合からの損害賠償に応じる義務と責任があります。

4. 管理組合の義務と責任
 管理組合は、居住者及び管理組合という組織体に対して、 共用部の適正な維持保全に失敗して機能不全を起こしたり、損傷を受けたり、 或いは、財政的な損害を蒙る事がないように管理していく責任があります。

5. 外部に対する義務と責任
 区分所有者は誰でも共同住宅の管理組合に対する外部からの損害賠償などの 申し出に応じなければならない義務と責任があります。 但し、その個人の責任は共有部の持分割合内に制限されます。 多くの外部申請者は最初は管理組合に申出しますが、 申出して60日以内に管理組合が対応しなかった場合は、 一人又はそれ以上の個人区分所有者に請求することができます。
 請求された区分所有者は、それが管理組合相手の損害賠償であった場合は、 自動的に他の区分所有者や管理組合相手に請求する権利を得ることになります。 これは、住戸に対する法的な請求も含みます。

6. 区分所有者の違反行為 ー 管理組合の責任
 もしも、区分所有者が義務を怠り、違反行為を繰り返した場合、 管理組合は所有者にその住戸での居住を禁止し、強制的にその住戸を売却することができます。 但し、そのことができるのは、 管理組合が所有者に対して文書でその理由を明記して警告した上で、それでも所有者が応じなかった場合に、 裁判所に提訴し、裁判所の決定が出てからです。

7. 管理組合の権利と責任に関しては、「管理委託契約」を参照してください。

8. 理事会の権利と責任に関しても同様に、「管理委託契約」を参照してください。

9. 総括: (General:)
 注意すべきは、区分所有者と管理組合、及び、区分所有者間の内部の法的な紛争よりも、 通常は、区分所有者に対する外部関係者からの申出のほうに高い優先度が与えられるということです。

(2021年5月24日初版掲載・随時更新)