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第3章 管理と運営  ・  第2部:財務管理(Financial management)

 はじめに

 ※免責事項
   このマンションNPOのHpでは国連発行文書(UNITED NATION PUBLICATION-ECE/HBP/198)の
   内容をご紹介しています。同文書の日本における公式の文書ではありません。
   また文中の翻訳表現は権威ある公式の翻訳ではない事をお断りしておきます。(マンションNPO)

 ※ 本文の章・項・号番号は便宜的に当Hp日本語訳でつけたもので、報告書原文には付いていません。

3.5 財務管理  (Financial management)

成功する財務管理は区分所有者の効果的なファンクショニング(functioning:機能・働き・役目)の基礎の上に成り立っています。 よく準備された予算書と堅実な財務管理は、 支出に見合う十分な収入を確実にするための、前もって欠く事のできない必須のものです。

管理組合組織内の他の業務に比べて、 財務管理には高度な個人的インテグリティ(integrity:完璧さと誠実さ)が要求されます。 そのインテグリティは監査と管理の高度なシステムと結びついていなければなりません。 これらの管理システムに関する情報は、すべての区分所有者に提供されなくてはなりません。 (通常は定期総会で提供されます。)

(1) 財政計画と予算の作成 ー 管理組合の年次予算書
  (Financial planning and budgeting ー association's annual budget)

年次予算書は管理組合の財務計画です。
予算は収入を見込んで、当年度の管理と運営に係る支出との間のバランスをとります。
予算書の見本を 付録9 管理組合年次予算 に示しました。  

年次予算は管理者又は理事会によって年間業務計画に基づいて準備されます。
定期総会で承認された予算は年間業務計画の承認に対する課程の一部です。

予算に貢献しているのは他の特徴ある原因から来ています。 管理費はたびたび建物と共用部の保全と運営に充てられる単独の総収入であるとされてきました。 然しながら、総収入は他の、例えば、罰金、メンテナンス徴収費、特別負担金、 共用部の賃借使用料収入などが集められたものです。

予算に対する貢献は、異なる方法によって見積られ、徴収されます。 管理者は管理費を適切な方法で徴収し、管理組合の勘定口座に入れて安全な資金を確実にします。
この事は、言い換えれば、資金の投入は期間内の予算と他の制御目的で消費されることが、 計算と査定という手段によって提供されているということです。 運用と保全のための系統的な計画と計算はとても重要です。

通常の支出の計画と計算を最初に行います。 その意味は、各支出項目の費用を出すことは、 共同住宅を評価し、その費用を考えなければならないからです。
前年度で計上された費用を修正して予算として計上する方法ではなく、 新しい予算は新しい費用を見積った上で計上すべきです。 前年度予算の写しを調節して提供するのでなく、 新しい請負見積書に基づき計算した上で予算化してください。
予算は報告書の信頼性に前年度の運営からの円熟を付加することになるでしょう。

年次予算は、分離した各項目のまとまりから成っています。 各区分所有の住戸への外部からのサービスは、供給者と管理組合との間の集団的な契約に基づいて、 各区分所有者の使用料ごとに課金されています。(ガス、電気、温水他)
この費用勘定の分離は通常の公共料金に対応するもので制御目的からして重要です。

年次予算はバランスがとれたものでなくてはなりません。 例えば、総収入は総支出と同一金額になります。 このことは、区分所有者の管理組合への支払は、 管理組合のサービスへの支払とバランスしていなくてはいけないということです。

新しく建設する場合や大規模修繕の場合などで基金やローンなどの 「他の収入」によってバランスを取ることがあります。
見本として付録]に「年次予算書における収入と支出の勘定群と項目」を示しています。
この勘定リストはそのまま使えますが、勿論拡張しても構いません。
付録10 年間予算の収入と支出項目  参照

収入超過は区分所有者に共用部に対する各専有部の持分配分によって返金することができます。 或いは区分所有者がそのように決定すれば、管理組合の銀行口座に保全用、或いは大きな又は費用のかかる資本的改良(訳注: capital improvements 資産価値を上げる改良工事を会計用語でこのように表現します。修繕費用は経費扱いですが、 資本的改良の場合は、課税対象の民間企業では経費にできず資本の増加となるので、この表現を使います。 管理組合は非営利法人ですから、課税対象ではないので、税務上の資本的(capital)の意味はありません。) の準備金として預金しておくこともできます。

次のセクションでは年次予算書に含まれる費目を挙げておきます。

(a) 年間収入(REVENUES)

このセクションでは年間を通して管理組合に入ってくるすべての収入について
付録10 年間予算の収入と支出項目 で提供しています。

勘定科目番号1110は区分所有者が支払う月額の共通費用科目です。 この科目は修繕と保全の負担費用に充てられます。 科目番号1410は各区分所有者が住戸の公共料金等の戸別経費を管理組合を通じて支払をするサービス費用です。 年間収入には他にローン、助成金、補助金などが含まれます。

(b) 管理経費/財政経費(MANAGEMENT COSTS/FINANCIAL COSTS)

経費は管理組合の管理と財務につながっています。 管理と運用に関する経費をはっきり区別する事が困難な事例もあります。

管理員人件費は通常、予算書では運用経費に計上されますが、 技術管理者(technical manager)の人件費は管理経費に計上されます。 どちらも予算合計の中に含まれるとしても、科目を置き違えることがあってはなりません。 このようなケースでは厳しく判定しなければなりません。

(c) 運営経費(OPERATING COSTS)

運営経費は科目番号3410と3420で、区分所有の住戸につながる共用部の運営に限定されます。 この科目はサービス経費(6110〜6120)と混合してはいけません。

(d) 保全経費(MAINTENANCE COSTS)

これらの経費予算は、保全の大きな対象ごとに 経費の細目別に変換して記載していきます。

(e) 改良工事と大規模修繕工事の経費(COSTS OF IMPROVEMENTS AND MAJOR REPAIRS)

総合計画のもとに、毎年、広範囲にわたって改良していく工事の当年度分の経費を意味しています。
それぞれの分割された工事計画の詳細な計算をもとに予算に計上します。

(f) 戸別経費の徴収(COSTS OF SERVICES TO SEPARATE UNITS)

各専有部へガス、電気などを供給する費用として、 供給会社から管理組合に請求書が来る分の経費です。 このような集合的な請求書は、もし可能なら、避けるべきです。 それができない場合、その経費は予算化しなければなりません。(そして後で徴収する) 予算化する経費は供給者からの正式な請求書に基づいたものでなければなりません。

(2) 月次予算管理(Periodic budgets)

バランスの取れた予算が、管理組合の預金口座に十分な資金があって、 支払期限の来た請求書をいつでも払えることを保証する訳ではありません。
流動性の資金不足のために外部資金を必要とすることを防止するために、 支払は収入とのバランスをとって特定の期間内に配分すべきです。

ほとんどの管理組合では共通経費、共用部の使用料などは毎月の支払としているのが普通です。
収入と予算の月次予算を組むことは当然です。 (付録9 管理組合年次予算  参照)

小規模の共同住宅では、予算書をそれほど複雑にしていないところもあります。 月次予算までいかなくても、四半期ごとの予算書を作成することもできます。要は資金の管理にあります。

予算は年次予算の各科目ごとに一定期間ごとに割り振って管理すべきです。 期間内で経費と収入のバランスを取る事は重要です。

ある期間内での収支がバランスしていたとしても、 季節性のイレギュラーな事態で費用が発生することがあります。 このようなことは予想しておくべきです。たとえば、管理又は保全を行って発生することもあります。 これらの理由によってイレギュラーの収入又は費用が発生することがあります。

予算バランスの周期的な崩壊に際しては、管理者は財務計画を立てて、 流動性預金で最大限可能な取り崩し額の範囲内で収めるのがベストな勘定対策ですが、 それでも収まらない不足分は、できるだけ短期の負債(short-term liability)、 又は流動性ローン(liquidity loans)とします。

(3) 銀行口座の管理(Bank accounts)

すべての管理組合は収入は銀行口座に預入れて、 支払もその口座で決済しなければなりません。
多くの事例では、1つ以上の目的毎に異なる口座を設け、 その口座ごとにバランスを取る事が賢明な方法とされています。

個々にはそれぞれの国内法、管理規約そして理事会の決定に従います。 基金は例えば建設基金、総合修繕基金、改装基金、修繕積立金など目的別口座に分けておくべきです。

これらの口座には明確な目的名称をつけることができます。 例えば、運用基金、修繕基金など各々の名称をつけます。
国によっては法で厳格に、預け入れる銀行が異なっても管理組合又は他の公式な建物名称などの、 同一名称とすることが決められている所もあります。

管理者または理事会は銀行口座開設に際し、資格をもった代理人を通して 管理組合名義で口座開設申請を行います。 小規模の管理組合では、 口座開設に全区分所有者の代表者の市民コード番号を登録しても良いことになっています。
銀行約款では、管理組合の財務責任者の氏名とサインの登録を要求しています。 口座の取扱い(transactions)はこれらの登録された者だけに限定されます。 もしも、この登録した者が業務権限の一時停止処分を受けたときは、 この登録者は口座の取扱い(transactions)に関する法的権利を失い、 管理組合の口座は閉鎖されます。

どんなことがあっても管理組合の全口座が閉鎖される事態を避けるために、 登録する組合名を変えた口座を分散して開設したり、同一名称での登録の場合は、 他の代理機関、又は代理人との連名口座とすることもできます。

管理者は銀行口座の取引内容、引落し控除依頼票、預金、銀行認可サインを含めて、 監査を実施しなければなりません。 口座の取扱、内部及び外部監査は3.5.(6)項に示した方法で行います。 ((6) 監査 参照)

銀行利息は所得税から免除されます。 永年取引していて頼りになる銀行のキャッシュフローの総合バランス記録は、 将来、共同住宅建物の修理、大規模修繕、 又は改良工事などでローンを組む事態になったときに、 管理組合に関する信用情報となるので、 メインバンクを持つ事は賢明な方法です。

銀行勘定照合表(Bank statement)の情報は通常でも管理者の月次、又は四半期ごとの 状態報告書であり、理事会での討議資料となります。

(4) 会計(Accounting)

(a) 会計法令の必要性(STATUTORY ACCOUNTING IN ASSOCIATIONS)

会計法令の必要性に関する議論においては 共同住宅法には、 「管理組合は会計専門家が関与する仕組みを整備すべきである」ということを特別に規定すべきだというのが議論の概要でした。

国内法においてこの規定がない国にあっても、管理組合は厳正な規則を定めるべきです。

(b) 会計基準(ACCOUNTING STANDARDS)

管理組合会計の基礎的な目標は、区分と評価に照準を合わせ、 共同住宅と区分所有者間の関係性を財務状態に反映させて、 管理組合内で起きた財務に強い影響を与える出来事を広報することにあります。

会計の役目は、将来計画と予算作りに役立たせるために透明かつ完全なデータベースを作成することです。

これらの目標を成し遂げるために、 会計システムは確かな実務基準と適用可能な定型書式(templates)を必要としています。 これらは利害関係者が容易に財務報告書を読んで解釈するのを可能にします。

会計技術は訓練された人による専門職の技術です。管理組合はそれゆえに、 組合の会計を引き受ける専門の会計士を雇用しなければなりません。 しかしながら、会計記録は管理組合の管理事務室に保管されています。 専門的知識の必要性から、 この指針ではチェックリストと適用可能な会計手続きを下記に示しました。

(c) 会計帳簿(THE ACCOUNT BOOKS)

会計帳簿は、定期的に見直さなければなりません。この帳簿に含まれるものは、
(a) 仕訳帳(journal) 信用取引を含む全ての取引の明細
(b) 総勘定元帳(general ledger) 各取引を複式簿記で記録
(c) 補助元帳(auxiliary ledger)
(d) 貸借対照表(balance sheet) 資産の部と負債の部
(e) 試算表(trial balance) 補助元帳から総勘定元帳へ

管理組合の会計帳簿の定型書式(accounting template)は、 財務状態(financial condition)と収益/損失(profits/losses)を明確に示していなければなりません。
この定型書式は特に次の収集に役立ちます。
(a) 貸借対照表の計算のもとになったデータの必要性
(b) 収支計算書(Income statement)と他の計算書の基礎になったデータ
(c) 税務査定のために必要な情報とすべての完全な取引帳簿、外部契約者と被雇用者
(d) 利益のもとになった要因と管理組合の総資産

管理組合は会計帳簿の保存に関して、 法に規定されている保存期間よりもできるだけ長く保存しておかなければなりません。
特に
(a) 勘定科目表(accounts chart);総勘定元帳科目・データ入力手順・損益評価手順・
   補助科目(ancillary accounts)に関する手続き及び総勘定元帳に割当てた科目
(b) 会計帳簿に用いられたリスト

期末整理(closing entries)に用いる会計帳簿は”開かれた”("opened")(訳注:決済前の)ものであることと、 管理組合が設立された時の基金と以後の各取引開始年月日が記録されていることが必要です。

会計帳簿は、完全に事業年度=会計年度(financial year)が終了し、"清算"(liquidation)された時点で、 "閉鎖"("closed")(訳注:その年度の帳簿を閉めること。閉めた後は修正できない。)されなければなりません。

会計帳簿は当期財務報告書の承認を得た後、遅くとも15日以内に"閉鎖"されなければなりません。

(5) 財務諸表(Financial statements)

ほとんどの国内法によれば、 管理組合は通常、事業年度が終了した時点で財務諸表を準備しなければなりません。

この財務諸表は下記を含みます。
(a) 貸借対照表(balance sheet) 注釈付き(with notes)
   貸借対照表は管理組合の財務状態(financial situation)を表わしています。
   資産(asset) ー 負債(liabilities) = 純資産(net worth)
   純資産は銀行残高が幾らになっているかを示しています。
(b) 収支計算書(Income statement)注釈付き(with notes)
   収支計算書はある期間(例えば1ヶ月、四半期、又は1年)内に発生した取引
   を予算と対比して示しています。

会計法では通常、財務諸表として備えていなければならない詳細な規則がありますが、 ほとんどの管理組合に要求される最低限必要な事項も同じです。

すべての管理組合が、公認会計士に財務諸表を完全に作成してもらうのは望まないにしても、 一般的には公認会計士に帳簿を管理してもらわなければならないと思っているので、 財務諸表の下に公認会計士の注記をいれてもらう事を望んでいます。 (訳注)「公認会計士の関与」 参照

財務諸表は、金額が内部で整合性が取れている各会計帳簿をもとに作成されます。
これらの財務諸表は事業年度終了後3ケ月以内に遅滞なく提出されなければなりません。

管理者または理事会は、提出された財務諸表を管理組合定期総会と他の関係機関に対して、 管理規約規定期限内に、または法定期限内に報告しなければなりません。

財務諸表には作成した公認会計士、又は管理者、 理事会理事の署名と日付がなくてはなりません。

大規模管理組合の場合、或いは区分所有者の求めに応じて、四半期ごとの、 或いは半年間ごとの期間収支計算書を提出することがあります。 それは、管理組合の会計管理期間ごとに適正に決算処理がなされていることを確認するためです。

(6) 監査(Auditing)

監査業務は通常、管理組合の内部統制制度に基づく日常的な管理業務となっています。 しかしながら、法的な意味では異なります。監査には外部監査と内部監査があります。 管理組合の監査ではどちらも行うことが推奨されています。 理事会、若しくは特別監査委員会が、管理組合総会で指名されて行う場合には、 定期(又は四半期ごとの)内部監査になります。収入と支出が予算内に収まっているか、 資産と損益がバランスしているか、銀行口座預金残高が合っているか、を監査して 誤りや食い違いが見つかった場合、会計事務担当者に修正するよう報告します。

修正に失敗した場合、区分所有者に報告し、 将来同じ誤りを繰り返さないための対策についても評価をすべきです。

外部監査人は、財務諸表を監査、評価し、管理組合定期総会に提出する監査報告書を作成しなければなりません。 それによって総会では管理組合の財務諸表を承認するかどうかを決定する判断材料を提供することになります。

内部監査、外部監査にかかわらず、すべての監査は、 会計事務担当者と帳簿記帳者から帳簿閉鎖の通告を受けて、 管理組合の財務状態を明確な全体像を得るためのすべての必要な情報を入手すべきです。

(7) 請求書の支払(Payment of invoices)

すべての請求書による支払は経費統制業務として、 この指針の 3.6.(4)[運用・保全・修繕の費用管理] に基づき、 又は、管理者の責任において、費用を管理しなければなりません。

請求書は管理者と理事会の責任者とのクロスチェックを行うべきです。 この管理は請求書を会計文書として法的かつ公式に承認する行為です。 管理者又は理事会メンバーの責任において請求書に支払のサインをし、 銀行口座の管理登録者によって支払されます。

定期総会の決議によって、単独者による支払決済額に制限を課すことができます。 又は、予算を超過する額についても同様です。 このような場合は管理上必要な特別な承認手続きによることになります。

原則として、すべての支払は銀行口座を通しての決済になります。 少額の管理用品の購入に現金を使わなければならない場合は限度額を決めておくべきでしょう。 すべての請求書は会計補助簿にファイルしておきます。

(8) 納税(Taxation)

管理組合の収入は所得税課税対象から免除されています。 根本的・潜在的な原則として、 管理組合のすべての収入は共同住宅の資産を持続的に維持していくための維持費用に充てられます。

剰余金(surplus)も含めて収入の多くを免税とするのは税法からだけではなく将来にもわたって正当化されます。 それは建物維持管理費用の代償とみなされています。 管理者と理事会は管理組合が税法上適合していることを確認すべきです。

資産課税に関する戸別の専有部に関しては、 区分所有者は政府機関に直接納税することになります。 共有部に関係する資産課税に関しては管理組合の管理者が支払うことになります。

管理者と理事会は、エネルギーの効率化プロジェクトや他の改善についても考慮を払うと共に、 国の課税規則について認識すべきです。

(9) 保険(Insurance)

管理組合は自分達の建物や他の共用設備、 装置その他の第三者の責任と義務に関係する物や、管理組合が直接雇用している 被雇用者の事故による障害などについての保険方針を持つべきです。

保険費は保険がカバーする範囲や、算定基礎となる建物の種別、 共用部における活動、建物構造、 危険や損傷に対する防護装置の種類などの評価に基づき算定されます。

火災、水害、雷その他の自然災害に対して建物構造物に保険をかけるのは賢明な方法です。 建物構造物その他の設備の構造的、物理的損傷に対してだけではなく、 腐食やカビに対しても、そして、従業員の作業中の事故の補償についても同様です。

保険でカバーする範囲の詳細については、保険の種類と掛け金について保険方針に基づいて、 検討しなければなりません。
保険の掛け金は定期総会の予算承認を受けることになります。 最終的な保険方針は管理者又は理事会のサインを受ける事になります。 保険が戸別の区分所有者の住戸、或いは商業用の住戸に適用されるのは、構造物の一部としてだけです。 このような戸別の保険は各区分所有者が戸別に契約しなければなりません。

(10) 年間事業計画書(Annual activity plan)

年間活動計画とは管理組合が管理を実行していく活動計画のことです。 活動計画書は、年間の景観保全、看板標札、排水改良工事や他の計画などについての他に、 次期以降の財政の骨組や総会決定事項の重要性と結果についての記述なども含みます。

年間事業計画書はまた、活動の必要性について財政面、技術面、 そして社会的評価基準にあわせて評価することもできます。

年間事業計画書の様式には定型がありません。 この計画には管理組合の予算に関係する活動が記載されます。 年間事業計画書が管理者と区分所有者の間の合意形成のためのコミュニケーションですから、 共同住宅内の生活全般と管理を改善していく事に照準を合わせた計画とすることを推奨します。

(a) 計画書作成の責任(RESPONSIBILITY)

管理者または理事会は、年間事業計画書を作成する責任があります。 もしも会計年度が12月31日で終了すると考えると、 計画の草案が理事会の検討に付されるのは12月15日です。 年間事業計画書は理事会で最終版を決定し、定期総会に提出されます。

(b) 計画書の内容(CONTENTS)

上記で示したように、年間事業計画書はいろいろな様式で提供されます。 下記に活動計画に盛り込むべき項目の提案リストを例として挙げました。 管理規約、その他の管理、運営、そして共同住宅の生活に関する情報が含まれています。
 (a)財務
   ・ 年次予算
   ・ 共用部経費の月額支払額合計、公共料金含む
     報告書には戸あたり料金の計算に基づく基礎的な月額定額費
     各設備ごとの保全費と修繕費及び修繕基金を分けて記載 
   ・ 専有部の月額支払額合計、公共料金含む
   ・ 管理者(及び/又は)理事会メンバーに対する報酬の水準
   ・ 銀行口座(積立金・基金の資金移動計画)
 (b)管理
   ・ 管理組織の変更
   ・ 管理スタッフ(担当者の変更)
   ・ 代理人委任権
 (c)運営
   ・ 運営手続き(清掃、防犯、安全等、居住者にとって影響があるとき)
   ・ サービス(デリバリーサービス等の変更)
   ・ 保険(新規計画、既存契約の変更、保険方針)
 (d)保全
   ・ 保守作業計画(作業内容、日程、工事場所と範囲)
   ・ 大規模修繕と改良工事(作業内容、日程、工事場所と範囲)
 (e)共同住宅全般に関する主要な変更
   ・ 共用部スペースの分譲又は賃貸
   ・ 区画の連結
   ・ 共用部スペースの使用方法の変更
 (f)環境と社会生活に関する変更
   ・ 使用細則の変更と追加(順番制、清潔維持規定、駐車場、ペット他)
   ・ ボランタリー規則
   ・ 総会と社会活動


(訳注)公認会計士の関与

米国の公認会計士による外部監査(つまり保証業務)には公認会計士に払う費用が低い方から高い順に並べると、
「コンピレーション( compilation )」、「レビュー( review )」、「監査( audit )」の3段階の監査契約があります。

詳しくは、本Hpの「「管理組合会計 目次」>「第4章 管理組合会計の規程」> 「4.2 管理組合監査」
> 「8 監査は信用をコンパイルする」 を参照ください。

(2021年5月12日初版掲載・随時更新)