「管理組合会計 目次」 > 【前頁】 3.2 収益事業の意義と範囲 > 3.3 駐車場の収益事業判定 > 【次頁】 3.4 管理組合と地方税

3.3 駐車場の収益事業判定

1 マンション管理組合が行う駐車場の収益事業判定

外部貸し駐車場、携帯電話中継基地局借地料、看板・広告塔使用料などの収益事業には納税義務が生じます。

(注記)
 1.この解説は平成24年2月13日現在の法令・国税庁通達等に基づいて作成しています。
 2.この解説に示す事例は、下記に示す特定の事実関係を前提とした参考事例であり、 必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんので、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この解説内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
あなたの組合の具体的な事例については所轄の税務署法人税担当部門にお問い合わせ下さい。

税務相談,税務代理などの税理士業務ができる者は税理士、公認会計士、及び国税局長に対して通知を行い、一定の条件のもとで税理士業務を行うことができる弁護士に限られます。
(税理士法 平成13年5月改正、平成14年4月1日施行)

有償、無償を問わず、これらの資格を持たない者(例えば××管理士など)が税務相談などを行った場合には税理士法違反として罰せられます。
税務に関して、そのような例があった場合にはその者の氏名を日本税理士会連合会に照会ください。

税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としています。 税理士制度は、このような公共的使命を負っている税理士が納税義務者の援助をすることによって、納税義務を適正に実現し、これによって、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に資することを目的として設けられたものです。

2 平成24年2月13日付け国税庁見解の要点

1. 経緯

 千葉行政評価事務所に下記の行政相談(平成22 年1月13日受付)がありました。

マンション管理組合法人が管理する駐車場を、自組合員と自組合員以外の者に貸与した場合に得られる収入の法人税課税について、 管轄の税務署に問合せたところ、「全収入に対して課税される」(全部課税)との回答があった。 「自組合員以外に貸与した駐車場から得られる収入」のみ法人税課税の対象とする見解を明確にして欲しい。

 関東管区行政評価局は、平成22年3月23日開催の行政苦情救済推進会議(座長:松尾邦弘元検事総長)に諮るとともに、国税庁に見解等を照会したところ、 国税庁はマンション管理組合が自組合員以外の者へマンション駐車場を貸し出すケースは様々であり、実態に即した見解を示す必要があるとの回答。

これを受けて関係団体が実態調査を実施。その後、実態調査を踏まえた課税関係の整理について国税庁と国土交通省が協議。
ところが、平成23 年10月に至っても見解が示されなかったことから、同推進会議では、「本省(行政評価局)と国税庁との間で対応策を検討することが適当」として、行政評価局が国税庁に働きかけ、ようやく回答を引き出しています。

2. 各省の発表資料

(1)総務省

 平成24年2月15日総務省報道 Hp ⇒ http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/54452.html
タイトル:「マンション管理組合法人が組合員以外に駐車場を貸与した際の駐車場収入に対する法人税課税」
内 容: 総務省行政評価局は、国税庁に早期に見解を示すよう働きかけ、平成24年2月14日に改善が図られた。
(資料のダウンロード) ⇒ http://www.soumu.go.jp/main_content/000146701.pdf

(2)国税庁

 平成24年2月13日付けで国税庁がHPで国土交通省からの照会に回答 Hp⇒
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/hojin/120117/index.htm
タイトル:「取引等に係る税務上の取扱い等に関する照会(同業者団体等用)」
内 容: 回答内容は 「照会の内容どおりで差し支えない」 詳細の内容は、上のHpからダウンロードしてください。

以下、この内容をマンションNPOが要約してまとめていますので、参考としてください。

3. マンションNPOの解説

3. 駐車場を外部貸しする場合のチェック項目

駐車場の管理では、無断駐車や放置車両、障害物などのトラブルはつきものです。
税金の話に入る前に、駐車場の一部を外部貸しにする場合の事前に検討すべき点を参考に挙げてみました。

1)保安(セキュリティ):車両の出入り口及び駐車場のセキュリティ対策
(内部利用者と外部利用者の防犯上のセキュリティ対策)
管理組合の防犯上の責任範囲はどこまでか。
外部者の一般車両が出入りすることで警備会社との契約内容はどう変わるのか。
夜間の迷惑行為などをどうやって防ぐのか。

2)防災
駐車場で火災や地震などが発生した場合の消火体制と消火設備は現在どうなっているか。
内部利用者に対して規約、細則、消防計画などで秩序維持義務を課しているが、外部一般車両に対しては?

3)管理
新たに駐車場管理業者を入れるのか、
現在のマンション管理業者の管理委託契約業務を拡げて対応するのか。
元々の組合員の車両と組合員以外の外部一般車両の各々の管理範囲と責任はどこまでか。
区分経理と税務会計が加わり会計処理も面倒になるが、その分の管理委託費値上げ分はいくらになるのか。
使用条件(臨時的かつ短期的、区分所有者を優先的に扱うなど)を具体的にどう実施していくのか。

4)保険
火災保険、損害保険は建物設備の使用者が居住者に限定されているのが普通だが、契約内容はどうなっているか。 外部者用の新たな損害保険(管理者賠償責任保険)に加入する必要があるのか。

5)会計
単に納税だけの話ではなくて、非収益団体が収益事業を開始するとなると、多くの制度上の手続きと会計上の区分経理が必要です。 管理組合の会計は、総会で承認を得る決算報告とは別に収益事業による納税のための決算書
(細かな付表が定められている)を税務署に提出しなければなりません。
事業開始届けを提出すると、税務署から税務監査が入ります。(通常、事業開始してから6ケ月〜2年くらいの間に)

 以上の管理費用の増加と外部貸しによる収益を比較しないと、何のための外部貸しかわからなくなります。

4. 国税庁見解についての解説

 従来、1台でも外部貸ししたら全台数分に課税されるケースがある一方で、 別の税務署では判断が異なることもあったことなどから考えると、 限定された3つのケースについてだけでも回答を得たのは、行政評価局が云うように 前進と考えるべきでしょう。
その限定された3つのケースの条件をそのまま表したのが上の図です。

この図で、事業の独立性の判定については、法人税法2条13項に基づいています。すなわち

1 .政令で定める34業種に該当し、(注:駐車場の外部貸しは「駐車場業」に該当する)

2. 継続して行われ、(注:事業年度を通じて、又は定期的に、若しくは不定期に反復して)

3. 事業場を設けて行われている。(注:事務所等事業活動の拠点となる一定の場所を設けて)

の3つをすべて満たす場合には収益事業に該当し、法人税の申告が必要という課税原則のことです。

この法人税法2条13項とマンション管理組合が行う駐車場業は収益事業に該当しないための4つの判定条件とを総合的に勘案し、 税体系の整合性、租税回避防止の観点を踏まえて、個別の事実関係の判定をすることになります。

 前ページの「一般非営利法人の課税原則に対する財務省・税調の考え方」で示したように、 民間企業と競合するものは随時課税範囲を追加していく、 人格なき社団は法人税の対象でないものを課税するため一定のものを法人とみなして整備したもので非営利性に着目したものではない、 非課税優遇措置は非営利性ではなく公益性に着目する、などの考え方が課税当局の基調になっています。

担税力がない管理組合という組織に課税範囲を広げることによって生じる混乱を回避するという考え方はもともとありません。

 3.1項で説明した多くの課題と共に、この図の3つのケースの条件をどう扱って制度設計を行っていくかが鍵となります。

外部貸し駐車場だけではなく、携帯電話中継基地局借地料、看板・広告塔使用料など、すべての収益事業も同様です。 皆様の実情に合わせてご検討されますよう、お願い申し上げます。

ここで、税に関する質問です。

質問1; 非課税と不課税の違いについて述べてください。
質問2; マンション管理組合が行う駐車場業は収益事業に該当しないための4つの判定条件を述べてください。

答えは下記にあります。

5 課税される?課税されない? (課税条件の基本的な考え方)

(A) 駐車場の使用を区分所有者又は居住者のみとしている場合は不課税

1. 法人税

 マンション管理組合又は管理組合法人(以下「管理組合」といいます。)が、その業務の一環として、その区分所有者(入居者)を対象として行っている駐車場業は、下記の条件での事実関係を前提とする限り、収益事業に該当せず不課税となります。(平成18年5月1日国税庁 Q&A)

 (注)不課税とは、対価性がなく、資産の譲渡等に該当せず課税されないものを云い、
   非課税とは、資産の譲渡等のうち、課税しないこととされているものを云います。


マンション管理組合が行う駐車場業は収益事業に該当しないことの判定条件

@  駐車場業は、その区分所有者を対象として行われており、外部の者は使用していないこと。

A  駐車場の敷地はその管理組合の共有部として管理されているものであること。

B  駐車場収入は、管理組合当該年度決算書において管理費・修繕積立金等の管理組合収入と同じく、管理組合収入として計上され、管理組合会計の中で一体として運用されていること。

C  駐車料金は、区分所有者(入居者)を対象として行っている収益を目的としない事業であるから付近の駐車場と比較し低額であること。

不課税となる根拠

@  管理組合の構成員を対象として行う共済的な事業であること。

A  駐車料金は、区分所有者が所有している共有物たる駐車場の敷地を特別に利用したことによる「管理費の割増金」と考えられること。

B  その収入は、区分所有者に分配されることなく、管理組合において運営費又は修繕積立金の一部に充当されていること。

(注)
税法における団地管理組合は「人格のない社団等」とみなされ、また、団地管理組合法人については法人税法第2条第6号の公益法人等とみなされます。ただし、寄附金、法人税率については、普通法人と同様に取り扱われます(建物の区分所有等に関する法律第47条第13項)。

【 関係法令通達】
法人税法施行令第5条第1項第31号
建物の区分所有等に関する法律第47条第13項

2. 消費税

 マンション管理組合が収受する金銭に対する消費税の課税関係は次のとおりとなります。
イ  駐車場の貸付け………組合員である区分所有者に対する貸付けに係る対価は不課税となりますが、組合員以外の者に対する貸付けに係る対価は消費税の課税対象となります。
ロ  管理費等の収受………不課税となります。
【 関係法令通達】  消費税法第2条第1項第8号

(B) 区分所有者又は居住者以外の者に駐車場を使用させている場合の納税手続き

 マンション管理組合が区分所有者又は居住者以外の者に駐車場を使用させている場合は、収益事業として駐車場事業を行っていると認定されますので、管理組合に申告納税の義務が発生します。
駐車場収入を管理組合会計の中で一体として運用することは出来ず、管理組合会計(非収益事業)と駐車場事業会計(収益事業)とを区分経理しなければなりません。

【 関係法令通達】:法人税法施行令
(収益事業を営む法人の経理区分)
第六条 公益法人等及び人格のない社団等は、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行なわなければならない。
納税申告書の作成は、税理士、会計士以外の者は代理人となることができません。
また、収益を組合員に配分せず、管理費、修繕積立金等の管理組合収入として計上されるものであることを管理規約に明記し、制度上、後で述べるLLPとは異なるものであることを明らかにしておく必要があります。

課税手続きと申告窓口

(A)管理組合が行わなければならない手続き

(a-1) 事業開始届けの提出
1.税務署
2.県(都)税事務所
3.市区町村(法人税担当部門)

(a-2) 申告納税
1.[法人税](税務署)
2.[消費税](税務署)
3.[地方税]  1.県(都)に申告納税するもの(事業税、県(都)民税)
          2.市区町村に申告納税するもの(市(区)民税)

1.[法人税]

 普通法人又は人格のない社団法等における法人税は年800万円以下の各事業年度の所得金額に対して22%、800万円を超える各事業年度の所得金額に対して30%です。

経費の算定に関する注意事項

(1)機械式駐車場保守費の経費算入に際し、駐車場の全部を外部貸しているのではなく、本来の不課税取引である区分所有者又は居住者が使用している駐車場の一部を外部貸ししている場合、 保守費全額を収益事業の経費として算入することは出来ず、保守費の負担割合を合理的かつ適正に評価しなければなりません。

(2)区分所有者又は居住者が使用している場合には必要のなかった減価償却の算定が新たに必要になります。

(3)経費に算入できる修繕費の原則に則り「元の状態に戻す修繕=修繕費」と、「元より資産価値が高まる修繕=資本的支出」とに分け、資本的支出の場合は減価償却によって必要経費に計上することになります。

2.[消費税]

課税売上高が1,000万円を超える場合には消費税課税事業者届出書を税務署に提出し、申告納税します。
 基準期間の課税売上高が1,000万円以下に収まっていれば、原則として免税事業者になります。課税売上高が1,000万円以下は消費税を納税しなくていいわけですから、有利に見えます。 ところが、機械式駐車場保守費などの費用、即ち仕入にかかる消費税が、 受取駐車料金の総額、即ち売上にかかる消費税よりも大きい場合には、消費税の還付を受けることができます。つまり免税事業者ではなく、課税事業者を選択し、申告すれば、消費税が還付されます。  基準期間の課税売上高が1,000万円以下に収まっている場合に、課税事業者になることを選択するためには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。

この届出書の効力は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間とされていますから、前もって提出しなければなりません。税金は支払うだけではなく、申告すれば逆に戻ってくることもあるのです。

3.[地方税]

 法人税が各事業年度の所得金額に対して課税されるのに対し、地方税はたとえ事業が赤字になったとしても均等割は必ず納付しなければなりません。更に所得金額に比例する分に対して事業税が課税されます。  3.4 管理組合と地方税

6. 民法組合の特例制度(有限責任事業組合(LLP)等)は適用出来るか

 平成17年(2005年)度税制改正において、 租税特別措置法第27条の2《有限責任事業組合の事業に係る組合員の事業所得等の所得計算の特例》 及び第41条の4の2《特定組合員の不動産所得に係る損益通算等の特例》が施行され、 また平成17年8月1日には、有限責任事業組合契約に関する法律(平成17年法律第40号)(以下有限責任事業組合契約法)といいます。)が施行されました。

 有限責任事業組合は法人格を持たず、従って法人税は支払わないが、 収益の分配を受けた組合員が所得税を支払うという日本版LLP ( Limited Liability Partnership:以下LLP)であり、構成員課税(パススルー課税)が原則です。

 欧米では、このLLPのほかに、会社組織に類似したLLC (Limited Liability Company:以下LLC)があり、 日本でも「新会社法」(平成17年(2005年)7月26日公布)の施行により、 いわゆる日本版LLCとして「合同会社」が導入され、 2006年5月1日施行されました。法人格を持つ日本版LLCでは法人段階での課税となります。

 LLPは非収益の管理組合法人やNPO法人と異なり、明確に収益目的の共同事業を行うための組織で、上に述べたように法人格は持ちません。 また法人も組合員となることが出来る(例えばJR東日本・NTTドコモ・NTTデータの3社がSuica電子マネー普及促進のためのLLPを設立している。)ほか、 出資比率にかかわらず、損益分配割合を組合員の全員同意で自由に設定できるなど、事業の自由度は高いのですが、管理組合の場合、次の二つの問題があります。

(1)全員一致の原則

民法組合における契約行為は組合員全員に及び、そのため民法組合の原則で意思決定も全員一致で行うことになりますから、 組合員による全員一致がとりにくい大規模な管理組合では実際上、この形態をとることは困難です。

(2)構成員課税の原則

法人格はありませんから、構成員個人の所得として課税されます。

[所得税]

ア 任意組合形態をとる場合

 平成17年度税制改正に伴い、民法667条第1項「組合契約」に規定する組合契約により成立する組合(以下「任意組合」といいます。) 等の個人組合員の当該組合において営まれる事業(以下「組合事業」といいます。)に係わる利益等の課税の取り扱いについて整理がされました。
(平成17年12月26日付課個2-39ほか2課共同「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(「法令解釈通達」)

 任意組合の組合員の組合事業に係わる利益等の課税の取り扱いについては、所得税法上特段の規定が設けられていません。 しかし、私法上、任意組合については、「組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる」(民法667条1項)(=共同事業性)とされ、 さらに「各組合員の出資、その他の組合財産は、総組合員の共有に属する」(民法668条)(=財産の共同所有性)とされており、今回の税制通達改正においても任意組合事業に係わる利益等については、 従来どおり直接その組合員が納税義務者として課税される構成員課税となることが明らかにされました。

 即ち、駐車場の外部貸しを行っている管理組合が、駐車場業を任意組合形態で行った場合には、 区分所有者個人は事業所得の分配を受けたものとして、所得税の確定申告を行わなければならないことになります。

任意組合等の組合事業に係わる組合員における利益等の額は、 組合事業に係わる収入の額、支出の額、資産、負債等をその分割割合に応じて計算することとされていますが、 当該計算は@総額方式(所得税基本通達36・37共-20(1)))によることを原則とし、 継続適用を条件としてA中間方式(同20(2)))又は純額方式(同20(3)))によることも認められています。

イ 有限責任事業組合(LLP)の形態をとる場合

 平成17年度税制改正において有限責任事業組合制度の創設に伴う税制面の対応として、 有限責任事業組合契約法上、組合員個々が主体となって自ら事業を行う仕組みが確保されていること等を踏まえ、 組合員を納税義務者とし、組合段階では課税しないこととなります。

このため、有限責任事業組合の会計帳簿を作成する組合員は、 有限責任事業組合の各組合員に係わる組合員所得に関する計算書を、 組合契約に定める計算期間の終了の日の属する年の翌年1月31日までに、 当該組合の主たる事務所の所在地を所轄する税務署長に提出することとされました、(所得税法227の2)

ウ 匿名組合の形態をとる場合

 匿名組合契約とは、匿名組合員と営業者との二者間の契約であり、組合自体が権利・義務の主体とはなり得ず(商法535条,536条)、また、匿名組合契約においては、匿名組合員は営業者の営業から生じる利益の分配を受ける権利(利益配当請求権)を有します。(商法538条)

匿名組合契約に基いて営まれる組合事業に係る所得は、匿名組合員に直接帰属せず、いったんは営業者に帰属することとされ、匿名組合員に対しては営業者から分配される利益について課税されることとしています。(所得税基本通達36・3共-21)

匿名組合契約における匿名組合員は法制上組合財産の共有持分を有さないとする法的性格があること、及び実際上は営業者が主導権を持って複数の匿名組合契約を締結し多くの匿名組合員から事業資金の出資を募る手段として用いられるもので、 その分配される利益については出資・投資の対価という側面が強く、匿名組合員が匿名組合契約に基き営業者から受ける利益の分配は雑所得とされていますが、 (所得税基本通達36・3共-21)、これには但し書きがあって、組合事業や営業者の営業が所得税法上「事業」であり、かつ、匿名組合員が重要な業務執行の決定を行っている場合には、 単なる出資者としてではなく、営業者との共同事業であると認められる場合には、事業所得など営業者の内容に従い、 その所得の性質を決めることとされています。(所得税基本通達36・3共-21ただし書き)。

管理組合の駐車場事業を匿名組合形態とすることには、上に述べた法制上の制限があります。

7. 納税していない時の修正申告

 過去に区分所有者又は居住者以外の者に駐車場を使用させていて、納税していない場合には、事業開始年度にさかのぼって修正申告を行い、事業年度ごとの法定納期限から完納までの延滞税及び加算税を併せて納付しなければなりません。

加算税は、本来納めるべき税額を期限内に納めていない場合に課される類の税金で、ペナルティータックスといわれるものです。加算税には過少申告加算税,無申告加算税(納税額の50万円までの部分15%、50万円超での部分20%の割合で賦課されます),不納付加算税,重加算税(事実の全部又は一部を隠ぺいしたときは、無申告加算税に代えて40%の加算税が賦課されます。)の4つがあり、それに延滞税と利子税を加えた6つが附帯税とされています。

なお、自主的に期限後申告を提出した場合には、加算税は15%ではなく5%です。
期限までに申告書を提出しなかったことについて正当な理由があると認められるときは、この加算税はかかりませんが、「正当な理由」については、法律を知らなかったという「法律の不知」は該当しません。

延滞税は、納めていない税金について、法定納期限の翌日から税金を納めた日までの日数に応じて計算されますが、納期限の翌日から2か月を経過するまでの期間は原則として年7.3%で、2か月を経過した日以後の延滞税は、年14.6%です。

なお、平成12年1月1日以後については、納期限の翌日から2か月を経過する日までは、年7.3%と前年の11月30日現在の公定歩合に4%を加えた率とのいずれか低い率になります。

確定申告し、納税している管理組合の実例

 納税すべき収益事業を行っているにも係わらず、納税していない管理組合が多いのが実態でしたが、現在では税務署の税務調査を受ける組合が少しずつ増えています。組合員全員のお金を預かっているという自覚があれば、いつ、税務監査を受けても大丈夫という公開性が非常に重要だということも理解できると思います。税務署への確定申告によって第三者に公開することで、会計の確かさを確保できる利点があります。

収益事業を行っているA管理組合法人の例

(築20年、11階建て、284戸、自主管理、横浜市)

コインランドリー、自動販売機の事業収益、看板料、駐車場の外部賃貸などあわせて、800万円を超える事業収益を上げて確定申告し、納税しています。
この@ 収益事業、A 出費の削減(情報収集、業者コンペ、直接発注)、B 資産運用(年間2,000万円〜3,000万円の範囲で、元金が保証された社債や公債の投信で、年間受け取り利息65万円超の運用益を得ている)など、3本柱で組合財政の健全化に取り組んでいます。

(2012年(平成24年)2月13日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 13 February 2012/ Revised Publication -time to time)