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2.4 会社法はどう変わったのか ( 管理組合との関連 )

1. 商法改正と新会社法の概要

前頁「2.3 法人制度はどう変わったのか」で、管理組合をとりまく営利・非営利法人制度の全体の概要を示しました。 本頁では営利法人である会社制度について説明しています。

旧「商法」は第一編総則、第二編会社、第三編商行為、第四編海商で構成され、株式会社はこの第二編会社の中で規定されていました。 有限会社は「有限会社法」で規定され、この商法第二編と有限会社法、商法特例法(共に2006年5月1日廃止)を併せて通称「会社法」と呼んでいましたが、 2006年(平成18年)5月1日から施行の新会社法では正式に「会社法」という名称で制定されたものです。

会社法改正の背景

 戦後の高度成長期における日本経済は、政府(通商産業省主導の産業政策)と企業が緊密な協調関係にあり、 大企業は、株式の相互持合い、銀行主導型の資金調達、系列グループ経営といった社会構造全体で日本株式会社(Japan Inc.) を構成し、これらの大企業の下請けとして中小企業も高度成長の恩恵に預かっていました。

 高度成長が終焉を迎え、国際競争が激化し、経済環境が一変すると、かっては日本株式会社制度を支えてきた商法が もはや古すぎて、このままでは現実に対応できないということが分かってきて、H5年からH16年の間に合計25回もの商法改正が繰り返されてきました。 (H5年-1回、H6-1回、H9-3回、H11-4回、H12-1回、H13-5回、H14-1回、H15-3回、H16年-6回) しかし、いずれも目先の、その場しのぎの対応で、何とかつないできたようなものでした。

2005年(平成17年)6月29日、第162回国会で(新)「会社法」が成立し、2006年(平成18年)5月1日から施行されました。 改正の要点は
(1)最近の社会経済情勢の変化への対応 ( 建前ではなく、現実の実態を重視した大改正になっています。)
(2)上記を踏まえて、商法の文語体(此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム・・・という書き方でした)をひらがな書きで口語体にしています。
(3)規律の不均衡是正 ( H5年からH16年の間に合計25回もの商法改正が繰り返されてきた結果、法律の間でも整合性がとれなくなっていた。)

会社法改正の目的

 最近の社会経済情勢の変化への対応等の観点から、最低資本金制度、機関設計、合併等の組織再編行為等、 会社に係る各種の制度の在り方について、体系的かつ抜本的な見直しを行い、商法第2編、有限会社法、株式会社の監査等に関する 商法の特例に関する法律等の各規定を現代的な表記に改めた上で分かりやすく再編成し、新たな法典(会社法)を創設しました。

2 新会社法の要点

 利用者の視点に立った規律の見直し

 中小企業や新たに会社を設立しようとする者の実態を踏まえ、会社法制を会社の利用者にとって使い易いものとするために、 各種の規制の見直しを行いました。

(1) 株式会社と有限会社を1つの会社類型(株式会社)として統合

いわゆる株式譲渡制限会社(その発行する全ての株式についてその譲渡につき当該会社の承認を要する株式会社)について 取締役の人数規制や取締役会の設置義務が課せられない現行の有限会社型の機関設計の採用を認めるなど、 株式会社における定款自治の範囲を拡大し、その規律の多様化・柔軟化を図ることにより、現行の株式会社と有限会社の両会社類型を 1つの会社類型(株式会社)として統合しています。

既存の有限会社については、引き続き従前の規律を維持するための所要の措置を設けています。

(2) 設立時の出資額規制の撤廃(最低資本金制度の見直し)

株式会社の設立に際して出資すべき額について、下限額(現行法では株式会社につき1000万円、有限会社につき300万円)の 制限を撤廃しています 。

(3) 会社経営の健全性の確保

(1) 大会社について、内部統制システム(取締役の職務執行が法令・定款に適合すること等、会社の業務の適正を確保するための体制)の 構築の基本方針の決定を義務付けています。

(2) 会計参与制度の創設

 主として中小企業の計算書類の正確性の向上等を図るため、任意設置の機関として、会計に関する専門的識見を有する 公認会計士(監査法人を含む。)又は税理士(税理士法人を含む。)が、取締役等と共同して計算書類を作成し、 当該計算書類を取締役等とは別に保管・開示する職務等を担うという、会計参与制度を創設しています。

(3) 会計監査人の任意設置の範囲の拡大

 大会社以外の株式会社は、小会社であっても、定款で会計監査人の設置を定めることができるものとしています。

その他   (1) 新たな会社類型(合同会社)の創設

 創業の活発化、情報・金融・高度サービス産業の振興、共同研究開発・産学連携の促進等を図るため、出資者の有限責任が確保され、 会社の内部関係については組合的規律が適用されるという特徴を有する新たな会社類型(合同会社)を創設しています。