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1.4 国際会計基準(IFRS)

すべての会計の原点、
  それは正しい情報開示を行い、透明性を確保し、説明責任を果たせということです。

1 国際会計基準(IFRS)の成立

IFRS(International Financial Reporting Standards)はロンドンに本部を置く会計基準設定主体である国際会計基準審議会(IASB:International Accounting Standards Board)が設定した基準で、正しくは「国際財務報告基準」と訳すべきですが、一般的には「国際会計基準」と呼ばれています。

1966年、アメリカ会計学会(AAA: American Accounting Association)の『基礎的会計理論に関する報告書』(ASOBAT:A Statement of Basic Accounting Theory)が、会計を利益計算のツール(道具)というよりも、情報提供機能を強調したことで、情報利用者志向会計の構築という考え方が世界的に広まっていきました。

そして、この会計思考と、資本市場の国際化や企業の多国籍化といった環境が、国際的な会計基準の統一を目指す契機となっていき、1973年に、日、米、西独、仏など9カ国の会計士団体によって国際会計基準委員会(IASC:International Accounting Standards Commitee)が設立され、現在のIFRSの原型となる国際会計基準(IAS:International Accounting Standards)を作成します。

2001年、この国際会計基準委員会(IASC)の活動を引き継いで、会計士以外の利害関係者を含めて組織が改編され、大きな組織となった国際会計基準審議会(IASB:International Accounting Standards Boad)が、IFRSの制定機関として活動を開始します。この後、わずか、4年で世界100カ国にIFRSが広まっていきますが、そのきっかけは、EUからでした。

欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(EC)はEU統一の過程で、欧州の多数の市場を一つの市場にまとめる必要性から、統一されたEU独自の会計基準を作成する必要に迫られ、IFRSに着目し、2005年、EU域内のすべての上場企業にIFRSの採用を義務付けます。その後、香港、オーストラリアなどが採用を決め、2000年以降に台頭してきたBRICsが採用し、2011年までにカナダ、韓国、インドなどが加わり、数年後には150カ国以上になると予想されています。

BRICsの国々ではもともと会計制度が充分に整備されておらず、自前での基準作りが困難だったため、当初は先進国の基準の受け入れを検討しました。しかし、日本と同様に、米国の会計基準は「細則主義」で詳細な規定が多く適用が難しいのに対し、IFRSは「原則主義」で基本的な原理原則を定めた基準であり、分かりやすく、採用しやすいことから、新興国でIFRSの採用が急速に拡大していきました。

「原則主義」(プリンシプル・ベース)は、原理原則だけを示し、細かい規則や数値基準は基本的に示さないというもので、最初から様々な国での導入を想定していたIFRSの最も大きな特徴の一つです。但し、原則主義は、解釈に委ねられるケースが多くなるため、適切な理解と会計処理の判断の根拠を明確にすることが求められ、結果として、原則主義による財務諸表は、細則主義による財務諸表よりも詳細な多くの説明開示を伴います。

ちなみに、EUと我が国の管理組合が組織運用形態に関して多くの類似性をもっていることに驚かされます。例えば、管理組合の採決方法は「二重多数決方式」で、組合員数と議決権数の両方を数えなくてはなりませんが、国内法で二重多数決方式をとる例は区分所有法以外では余り例がありません。EUではこの「二重多数決方式」を提案しています。「加盟国数の55%以上が賛成し、賛成国の人口がEU総人口の65%以上なら可決」とする内容です。

管理組合会計においても、細則主義による統一会計基準の制定は今更ながら実現性はなく、そのような独自個別基準とは逆に、民間セクターと公共セクターの間に垣根を作らないセクターニュートラルの基本思想による非営利会計制度全体を統括した原則主義での概念フレームワークへの流れが加速されていく中で、管理組合会計での適用の仕方を構築していくことになるでしょう。

2 国際公会計基準(IPSASs)の成立

IFRSは民間企業を対象にした基準ですが、パブリックセクターにおける公会計の分野でも、国際会計士連盟 IFAC (the International Federation of Accountants) によって「国際公会計基準」 IPSASs (International Public Sector Accounting Standards)が基準化され、EUでも一般会計の発生主義会計への移行を含むIPSASsの導入を決定しています。