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首都直下地震 被害シナリオ

中央防災会議 「首都直下地震対策 専門調査会報告」(平成17年7月発行)から       ―想定しうる定性的な被害の様相―
(1)建物被害
(2)火災被害
(3)交通施設被害
(4)ライフライン被害
(5)石油コンビナート地区の被災
(6)大規模集客施設、ターミナル駅、地下駅の被災
(7)急傾斜地での二次災害、ゼロメートル地帯への浸水被害
(8)文化財の被害
(9)保健・防疫環境の悪化
(10)治安の悪化


(1)建物被害
 長周期地震動により、超高層ビルでは上層階の揺れが著しく大きくなり、また、免震建物では揺れが長く続くため、収容物の移動、転倒による人的被害が増大する。
発災後、都市近郊に存在する谷埋め型の大規模盛土造成地が変動し、地すべり的な破壊を生じ、建物はおろか電気、ガス、水道等の各種ライフラインや道路等に回復しがたい甚大な被害を生じ、また宅地に関しては回復困難なほどの被害を生じさせ集団移転を余儀なくされたり、人命を損失するなどの被害が発生する。

(2)火災被害
 発災直後の出火以外にも、復電による通電火災や不審火等による火災が発生する。
路上の放置自動車、沿道家屋の倒壊、電柱の倒壊により細街路の道路閉塞が発生し、消火活動が著しく阻害され、消火が著しく困難な火災が増える。
同時多発火災の発生、停電・電話の不通による119番通報の支障等により、消防による火災覚知が遅れ、消火が著しく困難な火災が増える。
路上放置自動車や沿道家屋等の倒壊による細街路の閉塞によって、避難困難となり、逃げまどいにより死傷者数が増加する。

(3)交通施設被害
 道路、鉄道、空港及び港湾施設の地下部分や水面下の基礎構造物は、強震動や側方流動に対する十分な耐震強化が実施されていない箇所が損壊する。
石油コンビナート地区内を通過する首都高湾岸線や近接する首都高横羽線が、石油コンビナート地区被災時の影響を受けて通行困難となる。
地下壁面の耐震化が不十分なところでは、ひびわれにより地下水による浸水が発生する。
また、地下水の浸水に伴い、地下鉄運行に必要な特殊な機能が損傷し、復旧までに長期を要する。
鉄道や道路をまたぐ橋梁が被災・落下した場合、通行中の列車や車両が被災し、死傷者が増加する。また、鉄道の脱線事故により対向列車や沿線建物との衝突事故が発生した場合、死傷者が増加する。
道路通行支障に伴う、救助・救急医療活動の遅れ、病院機能の低下による救急医療活動の支障に伴い死者が増大する。

(4)ライフライン被害
 幹線道路の寸断や交通需要の増大に伴う道路渋滞、沿道家屋等の倒壊による細街路の閉塞によって、復旧作業活動に著しい支障が生じ、機能支障が長期化する。

[電力]
 複数の発電所が同時被災した場合、周波数の低下などにより首都圏全体の電力ネットワークの機能維持が困難となる。これにより直接施設被害を受けない地域においても、停電被害が広域化する。
火力発電所では、LNGのほとんどが海外からの輸入調達に依存しているため、港湾施設の被災によりLNG タンカーが着岸不能に陥った場合、発電機能が著しく制限を受け、電力需要を賄うことが困難となる。
工業用水が被災し、発電用タービンの冷却水が補充できない状態が長期化すると、発電機能が低下する。

[通信・情報]
 直接施設被害を受けない地域においても、停電や輻輳に伴い、通信困難な地域が広域化する。
停電が長期化した場合、さらに、非常電源用の燃料供給が寸断された場合、各電話局の非常用発電機の継続利用が困難となり、通信支障による影響が増大する。
インターネットによる情報提供者のデータサーバーや地震防災対策が不十分なISP事業者が被災した場合、機能低下が発生する。

[下水道]
 管路施設の流下機能喪失による生活空間での汚水の滞留や処理施設の処理機能の喪失に伴う未処理下水の流出による公共用水域の汚染により、伝染病の発生等公衆衛生上の問題が発生する。
梅雨期や台風シーズンなど降雨期に地震が発生した場合、雨水ポンプ場等の雨水管路施設の流下・排水機能が喪失すれば、避難所等を含む生活空間に甚大な浸水被害を発生する。

(5)石油コンビナート地区の被災
 やや長周期地震動によって発生する石油タンク浮き屋根のスロッシングにより、浮き屋根上に油が溢れ出ることがある。大型タンクの全面火災、有毒ガスの流出、拡散に伴い、隣接市街地に被災影響が拡大する。タンクや配管の破損等により、油が海に流出した場合、海面火災、水質汚染等の影響が生じる。
隣接する異なる危険物取扱事業者相互の情報連携が不十分な場合、相互の事業者から流出した有毒ガス等が化学反応を起こし、想定外の爆発事故等につながる。

(6)大規模集客施設、ターミナル駅、地下駅の被災
 大規模な集客施設、ターミナル駅、地下駅では、火災の発生、デマ・流言等をきっかけにパニックが発生し、人的被害が増加する。
高架下利用店舗の被災により多数の死傷者が発生する。

(7)急傾斜地での二次災害、ゼロメートル地帯への浸水被害
 発災前後に大量の降雨が重なった場合、さらに大規模な崩壊や地すべりが発生する。また、崩壊土砂による河道せき止めにより、天然ダムが形成され、決壊による浸水が発生する。発
災前に大量の降雨が重なった場合、さらに大規模な崩壊が発生し、一箇所でも多数の死傷者が生じる。発災後、余震の発生や多量の降雨が生じた場合、急傾斜地が崩壊し、二次災害が発生する。
揺れによる水門の損壊等によりゼロメートル地帯への浸水被害が発生する。

(8)文化財の被害
 首都地域には、国の重要文化財が多数保管されている。強い揺れや火災により重要文化財を保管する建物が被災したり、重要文化財地震が揺れにより移動、転倒し破損するなどの被害が発生する。

(9)保健・防疫環境の悪化
 膨大な死者の発生により死体処理が滞る。また、避難者の発生により、水洗トイレの機能支障等、保健衛生医師の不足等により避難所を中心に伝染病等が蔓延するなど、衛生環境が悪化する。

(10)治安の悪化
 発災直後の混乱期において、警察による治安維持活動の手が不足するような事態が発生した場合、一部で治安が悪化する。


 

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