P 7 「エレベータの地震対策(第7章)」マンションNPOホーム


昇降機定期検査の問題点
(エレベータ事故に見る業界の今後の課題)


第7章 昇降機定期検査の問題点

2006年6月3日のエレベーター事故は何故起きたか?

1) 事故概要
(1)発生現場 東京都港区芝一丁目 シティーハイツ竹芝
(2)建物所有者 東京都 港区住宅公社
(3)昇降機製造会社 シンドラーエレベータ株式会社
(4)納入年月 1998年4月
(5)保守会社
@納入時〜2004 年度 シンドラーエレベータ(株)
A2005 年度 (株)日本電力サービス
B2006 年度(2006 年6 月現在) エス・イー・シーエレベーター(株)

(6)発生日時 : 2006年6 月3 日 午後7:30
(7)事故状況 : 1 階から12階に向かって走行、正常に12階に停止した。
市川大輔(ひろすけ)さんが自転車と共に後ろ向きに出ようとした時、かごが上方向に走行した為、かご床と乗り場上枠との間に挟まれ死亡した。

2) エレベーター仕様
(1)用途 人荷用 兼 非常用
(2)定格積載量 1850kg(28人乗り)
(3)定格速度 105m/min
(4)停止階 25階床(B2,B1,1〜23階)
(5)かごサイズ 間口1,800、 奥行き2,150
(6)ドア  中央開き(間口1,000、高さ2,100)
(7)ローピング  2:1 Φ14×8 本



エレベーターの設置と保守

7.1 エレベータの設置に関する法的根拠
  エレベータの設置については、建築基準法第34条第2項で「高さ31mを超える建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。」とされているだけで、それ以外に設置義務は定められていません。
また、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)(平成6年法律第44号)では、平成15年4月の改正により、一定規模以上で不特定多数の者が利用し、主に高齢者や身体障害者等が利用する学校や病院(特別特定建築物)などにエレベーターを設置する場合の規格等について規定されましたが、設置義務は定められていません。
但し、都道府県や市町村などの地方自治体の条例の多くで、床面積2,000平方メートル以上の官公庁・公益的施設にはエレベーターの設置に努めることとされています。
2.用途別では乗用、乗用(車椅子用)、非常用、寝台用、荷物用があります。
3.構造別では、ロープ式、油圧式、機械室なし(※1)の方式があります。

7.2 主な昇降機製造メーカーと保守会社
三菱電機(株)(保守は三菱電機ビルテクノサービス(株))、(株)日立製作所(保守は(株)日立ビルシステム)、東芝エレベータ(株)、フジテック(株)、日本オーチス・エレベータ(株)、日本エレベータ製造(株)、シンドラーエレベーター(株)など、製造会社又はその製造会社系列の保守会社が保守を行うメーカー系の他に特定のメーカー系列に属さない独立系の保守会社又はビル管理会社が保守を行う例が増加してきました。
 2007年(平成19年)3月末時点の大手メーカー別保守点検台数(*2)

三菱電機ビルテクノサービス(株) 約18万2千台
(株)日立ビルシステム 約15万1千台
東芝エレベータ(株) 約 8万7千台
日本オーチス・エレベータ(株) 約 5万3千台
フジテック(株) 約 3万6千台

合計

約50万9千台
 


7.3 エレベータの保守管理

(1) 保守管理の法的根拠

ア 日常的な維持保全  (建築基準法第8条)
  エレベーターの保守管理について、安全な運行のための日常的な維持保全を行うことが建築基準法第8条で定められています。
(財)日本建築設備・昇降機センター発行、国土交通省監修「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」が平成5年6月30日付けで公表されています。

  この指針では、「昇降機の維持及び運行の安全を確保するため、使用頻度等に応じて専門技術者に、おおむね1月以内ごとに、点検その他必要な整備又は補修を行わせるものとする。」とされています。
また、(財)建築保全センター発行、国土交通省監修「建築保全業務共通仕様書」(以下「国の「共通仕様書」という。)には、具体的な保守点検内容や点検周期が明記されており、保守管理業務仕様の一般的な目安とされています。

イ 定期検査(建築基準法第12条第3項)
  建築基準法第12条第3項《改正》(平16法067)において、昇降機の所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期(年1回)に、資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならないとされ、報告をせず、又は虚偽の報告をした者には50万円以下の罰金が課せられます。

  なお、エレベータの保守管理等の概略は、表1のとおりです。そのうち、毎年の保守管理として実施されるのは、1 予防保全と 2 事後保全です。
「定期検査業務基準書」((財)日本建築設備・昇降機センター発行(国土交通省監修))は定期検査業務の基準を定めたもので、検査項目、検査判定基準が記載されています。また平成18年2月15日、昇降機の検査標準(JIS A4302)の改正が官報公示されました。このJISA4302にも同様の規定があります。

  この定期検査は、昇降機検査資格者が検査を行い、所有者または管理者を代行して特定行政庁に対し、「昇降機等定期検査報告書」、「定期検査成績表」、「検査表」をもって報告します。この報告書は「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」の規定では3年以上保存することになっていますが、マンション管理組合の場合は、過去のすべての報告書を1冊の「エレベーター点検報告書」ファイルに綴じて永久保存されることをお勧めします。

表1 エレベーターの保守管理等の概略
項目区分 項目内容
1 予防保全 不具合(機能低下等)が発生しないように行う予防措置
 1.1.定期保守 定期的に点検・手入れを行う。
 1.2.定期検査 定期的に法定検査を行う。
 1.3.機能維持工事 定期保守・定期検査の結果に基きオーバーホールを行う。
2.事後保全 不具合(機能低下等)が発生した場合に行う事後処置
 2.1.故障修理 不具合の発生原因を究明し、適切な処置を行い、正常な状態に復旧させ、再発防止を行う。
3.改良保全 製品の機能改善等を行う措置
 3.1.仕様変更工事 付加装置の取付けなど仕様の追加,一部変更を行う。
 3.2.部分・一括改修 製品を部分的または全面的にリニューアルする。


(2) 定期検査を実施する資格者
  定期検査は建築基準法で定める国家資格「昇降機検査資格者」が行いますが、日常的な点検などを実施する者については、建設省(現 国土交通省)の「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」で専門技術者と記述されているだけで資格等の要件については特に定めていません。
  保守業者は、自らが行う研修などにより教育し、実務経験を積ませた者に行わせているのが実態です。昇降機監理士,昇降機保全整備士などの名称はメーカーが独自に定めた社内資格で国家資格ではありませんが、実機を備えた社内研修所で保守の技能訓練を行っています。

(3) 保守管理の方式
保守管理の方式としては、主に次の4通りの方式があります。

(1)FM(フルメンテナンス)方式
一定の保守料金の中で、エレベーターを定期的に点検、清掃、注油、調整をするほか、予防保全的に経年劣化を踏まえた機械部品、電気部品の取替修理、消耗品の交換まで行う総合的な保守契約。
但し、主要機器の修繕や使用者の故意過失による修理などは対象外です。
保守料金の中には表1の1.予防保全、2.事後保全までを含み、3項の.改良保全の費用は含みません。
1.予防保全の中には、1.3項の機能維持工事であるメインロープやガバナーロープ、移動ケーブルの交換、巻き上げ機のオーバーホール(分解点検)なども含まれます。2.事後保全の範囲では、制御盤のリレー類、インジケーターランプやリミットスイッチなどの交換も含まれます。

(2)POG(パーツ・オイル・グリス)方式
保守料金の中で行うのは、定期的な点検、清掃、注油、調整、小額の消耗品の補充・交換のみの保守契約です。機械部品、電気部品などの取替、修理が発生した場合は別料金となります。月々の契約金額はFM方式より低く抑えられますが、突発的な故障が発生した場合には、別途修理費がかかります。
[POG料金に含まれる消耗品}
カーボンコンタクト及びフィンガー、カーボンブラシ、ヒューズ、各種ランプ類(照明用、グロー、インジケータ)点検用オイル、補充用オイル、グリス類、ウエス、サンドペーパー、ビス、ナット、ワッシャー (但しランプ類には、スリムライン、ネオン管、インテリア照明、その他特殊な発光体は含まれません。

(3)RM(リモートメンテナンス)方式
走行速度や回数、扉の開閉状況などの運行状態を24時間遠隔監視し、診断するシステムを取付け、安全性の向上を図った方式です。

(4) FM方式又はPOG方式+RM方式
FM方式又はPOG方式にRM方式を組合わせ、より一層の安全性の向上を図った方式です。

{保守費}
保守費は、FM契約で月額4〜5万円台、POG契約で3〜4万円台、更にRM方式では月額1〜1.5万円台が加算される例が多いようです。かつては、独立系の会社の保守費がメーカー系よりも月額5千円から1万円程度安かったのですが、最近は、その差が縮まる傾向にあります。

(5) エレベーターの耐用年数
税法上のエレベーター法定償却耐用年数は17年とされていますが、定期的に部品の交換を行いますので、実際には税法上の耐用年数を超えて使用されるのが普通です。

7.4 エレベーター保守の委託契約
  委託方法には、エレベーターの保守管理業務のみを単独でエレベーターの保守管理業者に直接委託する方法と、管理、清掃、施設保守等のビル・マンション管理業務に含めて管理業者に一括委託する方法があります。
管理業者に一括委託した場合、受託業者が直接エレベーターの保守管理を行う場合と受託業者が直接エレベーターの保守専門業者に再委託する場合に分けられます。

仕様書の作成
  エレベーター保守管理業務を発注する側では、保守管理方式、日常的な点検整備回数、故障・異常時の復旧、詳細性能試験等を定めた仕様書を作成し、保守業者はそれをもとに入札(見積)金額を算出し、落札後は、仕様書によって業務を実施することになります。
仕様書の内容は次の5通りに分類されます。
1. 業者の点検業務説明書を下敷きに仕様書を作成しているもの。
2  総括的な事項のみ規定し、個々の装置についての点検内容は具体的には定めていないもの。
3.  業者の点検業務説明書(点検内容を細かく規定したもの)を借用し、そのまま仕様書としているもの。
4.  点検業務は国の「共通仕様書」によるとしているもの。
5.  仕様書はなく、契約書に項目等を簡単に列挙しているもの。

7.5 エレベーター保守契約の問題点
  官公庁が発注するエレベーター保守契約に際しては、本来 競争入札が望ましいのですが、いまだに指定メーカーへの随意契約としている自治体があります。
その理由はメーカー系の言い分そのままであり、公正取引委員会が是正勧告をした背景と重なります。

  随意契約とする理由(契約の性質又は目的が競争入札に適しないものとした理由)
1) 独自の設定及び非公開部分があり、他社では対応できない。
2) 部品の調達が他社ではできない。
3) メーカー系は部品を保有しており、迅速な対応が可能なのは当該会社のみである。
4) 故障時に他社では対応できない。
5) 当該機種の保守は、製造会社又は系列会社のみが担当している。
6) 24時間対応が可能なのは、当該会社のみである。
7) 遠隔監視システムによる監視は他社では出来ない。
8) 当該機種についての専門的知識を有し、業務に精通しているのは当該会社のみである。
9) 規格外の機種であり、他社では出来ない。
10) 他社では品質保証が出来ない。
11) 他に業者が見つからない。
12) 機能等を熟知した専門技術者により継続した保守が求められる特殊な設備である。

  一方、競争入札に際しては上記の理由に対しての有効な対策を考慮したものでなければなりませんが、シンドラー社のEVを巡る保守契約の実態を見る限り、実際には、それらの対策が考慮された形跡はありません。

7.6 公正取引委員会報告
  2003年(平成15年)10月の公正取引委員会の「マンションの管理・保守をめぐる競争の実態に関する調査」で、次の通り報告されています。
1. 主要メーカー系の保守業者のシェアが高く、独立系保守業者のシェアが低いのは、設備引渡しから一定期間、無償保証期間を設けて、無償保証期間終了後も引き続き保守契約を結ぶよう努めているため。
2. 主要メーカー系の保守業者は自社のEVの保守のみ行い、他社の保守は行っていない。メーカー系の保守業者の間では十分な競争は行われていない。
3. 主要メーカー系の保守業者の料金は、独立系保守業者より概して高い。
4. 独立系保守業者は、業務に必要な専門部品を競争相手でもあるメーカー系保守業者から購入せざるを得ない。
5. 競争政策の観点からは、独立系保守業者が競争単位として自由に事業活動を行える環境の確保が重要である。

7.7 公正取引委員会の勧告
 公正取引委員会は、2002年(平成14年)6月11日に製造メーカー系保守業者であるA社に対して保守用部品を独立系保守業者に販売するに際して、在庫即納できる部品でありながら、A社標準納期として定めた60日、120日を納期として納入したばかりか、価格もA社の購入価格の3倍で販売したとしてA社に違反行為の排除勧告を行い、A社はこれを応諾しています。

7.8 EV業界のこれからの課題
 過去に各社のEVで発生した閉じ込め事故などの事故情報が監督官庁にも届出されていないことが明らかにされるなど、シンドラー社の事故を契機として、我が国のEV業界が抱える多くの問題点が浮かび上がってきました。

 メーカー系保守業者のFM方式では単年度ごとの契約であっても、耐用年数20年を目安として部品交換を実施するのが普通で、長期に継続して保守管理業務を受託することを前提にし、20年間に必要な機械部品や電気部品の取替え費用を各年度に平準化した料金設定を行っているというのがメーカー側の主張です。
それなら、使用者側に対し、裏づけとなる20年間の長期修繕計画(いつ、どの部品を交換するかの計画)が提示されて当然と思いますが、残念ながら企業秘密という理由で出さないのが普通です。

 また、制御盤の回路図なども、(たとえ20年前の旧式の制御盤でさえも!)同様に企業秘密と云って、所有者にすら提示しません。エレベーターの図面を含む財産権は所有者にあるにも関わらず回路図を出さないのですから、ましてや、保守に必要なその他の技術情報が保守を引き継いだ他社に渡ることはありません。公正取引委員会が過去何度も不公正な取引の是正勧告や独占禁止法の排除勧告を出しても、いまだに変わることのない業界です。

 シンドラー社の事故は、これらの不透明な慣行の行政と業界で起きるべくして起きた人災といえます。(注4)

  築年数の古いマンションが増加し、保守会社を切り替えるマンションが増加する傾向にある現在、残念ながら不幸な事故は今後も続くという懸念は払拭できません。
(注)  洗濯機などの消費財の電気器具でも回路図は購入製品に付属しています。納入した設備財の回路図を企業秘密といって使用者に引き渡さないのはEV業界ぐらいでしょう。



(事故後のニュース その1)
  共同通信社によれば、東京都港区のエレベーター事故を受け、エレベーターの専門家ら9人でつくる国土交通省のワーキングチームが2006年.6月.27日夜、非公開で初会合を開き、保守契約の実態や定期検査による不具合の把握方法などについて、業界団体から約2時間半にわたって説明を受けた。

 港区の事故では不十分な保守点検が原因との見方も浮上しており、出席者からは「メーカーは保守管理業者らに、技術情報をどの程度開示しているのか」などの質問が出された。
 エレベーターの大手メーカーなどでつくる「日本エレベーター協会」の担当者は「所有者を通じて要請があれば資料提供に応じる」「保守管理に必要な情報は開示している」などと説明したという。(ここまでが共同通信社の報道)

  今まで企業が競争相手に自社資料を提供して協力するなど、実際にはありえなかったし、所有者にすら企業秘密と言って回路図も渡してこなかった。
業界団体は約2時間半にわたって建前論を貫き、行政は裏にある本質を探って打開する意図も能力も持ち合わせてはいなかった。古来からこれを「阿吽(あうん)の呼吸」と言う。 最初の「あ」から最後の「ん」まで.全てにおいて呼吸が合う、また、行動を共にすること。神社の狛犬(実は犬でなく獅子)の口を開けている右の狛犬が「あ」、口を閉じているのが左の狛犬「ん」・・


(事故後のニュース その2)

  (社)日本エレベーター協会は、事故後の2006.06.23付けで「エレベーターの安全に関するQ&A」を発表しました。下記はその中にある最後の項目です。

Q7 エレベーターの保全に関する情報の共有化はどのような形で行われているのでしょうか?

A7 @エレベーターの保全に関する情報は、保全契約の当事者間(所有者または管理者・保守会社)で共有されるべきものであり、一般的には保守会社がメンテナンス報告書や、定期検査報告書、故障報告等により所有者または管理者に報告することになっています。
  なお、所有者が保守会社を変更した場合は当該エレベーターの上記報告書を新たな保守会社に開示してエレベーターの維持、保全に役立ててください。

A今後は国土交通省における社会資本整備審議会「建築物等事故・災害対策部会」に設置される「エレベ−ターワーキンググループ」において、所有者または管理者、保守会社、メーカー各々の責任の明確化及び情報共有化への対応が検討されるものと思われます。

(* 注 アンダーラインは筆者による)

  (* 筆者注)建前と本音の乖離が歴然とした官僚的な作文の見本ですね。
建築基準法第88条規定のメンテナンス報告書、定期検査報告書(第36号の3様式(第6条関係))は法に規定する最低限の検査項目の情報をABCのランクで記載したものです。(Aは指摘なし、Bは指摘なし、要注意、Cは法不適合)

  設備図面や回路図の提示がない状態で、検査報告書だけで当該機種の必要な保全情報のすべてが第三者に正しく伝わるとは、(現場の保全技術者なら)誰も思わないでしょう。



(事故後のニュース その3)(*3)

メインロープのうち1本のロープにストランド切れが発生した問題  :下図は事故機の歯車付き巻上機、ロープは複数のストランド(多数の素線が撚り合わさったロープ状のもの)と心網を撚り合わせたもの

発生日時 : 2007年(平成19年)5月30日(水)午前9時頃 
発生場所 : 大阪市旭区高殿5−1 大阪市営住宅高殿西住宅9号館 
当該市営住宅の住民が5月30日(水)に昇降機のゆれ及び昇降路内の異音に気づき、フジテック(株)に連絡し、フジテック(株)が調査したところ、全3本のメインロープのうち1本のロープにストランド切れが発生していることが判明し、当該エレベーターを休止。同日に当該エレベーターのすべてのメインロープ(3本)を交換し、安全な運行を確認した後、復旧。 

これを受けて「フジテック(株)が保守点検しているエレベーターの緊急点検の実施について」2007(平成19年)6月8日 国土交通省住宅局建築指導課 発表

シンドラーエレベータ(株)、東芝エレベータ(株)、日本エレベーター製造(株)、 (株)日立ビルシステム、フジテック(株)及び三菱電機ビルテクノサービス(株)が 定期検査等を行っているエレベーターの緊急点検の結果について
2007(平成19年)9月18日 国土交通省住宅局建築指導課 発表


(事故後のニュース その4)(*3)

フジテック(株)製エレベーターで 鋼材(SS400材)を実際には強度の低い鋼材(SPHC材)を使用していた。その後、(株)日立製作所及び三菱電機(株)製のエレベーターにおいても同様の問題が判明
部材の強度不足について
2007(平成19年)7月12日 国土交通省住宅局建築指導課 

エレベーター等における強度の低い鋼材使用の実態再調査結果について
2007(平成19年)10月19日 国土交通省住宅局建築指導課 

「強度の低い鋼材がエレベーター等における一部の構造材等に使用された問題の再調査の結果について」
2008年(平成20年)2月12日 国土交通省住宅局建築指導課発表



(あとがき)
  (社)日本エレベーター協会加盟各社はいずれもビジネス倫理、企業責任,コンプライアンスを表明している企業ですから、 過去の護送船団馴れ合い業界の仲間意識に守られた日本の企業風土の弊害には各社の技術者の皆さんは既に気付かれているはずで、真に自立的にフェア(公正)を目指していらっしゃると思います。 フェアであろうとするのに何故、役所の指導を待つ必要があるのですか?。
あと何回 事故を繰り返したら真のコンプライアンスに到達できますか?


(参考)
(※1)機械室なしタイプは、基本的にはロープ式ですが、ロープ式の機械室内の設備をすべて昇降機内に格納し、機械室を設置しないものを云います。
建築基準法第8条(維持保全)
第8条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

建築基準法第12条第3項《改正》平16法067
3 昇降機及び第6条第1項第1号に掲げる建築物その他第1項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物に設けるものを除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者は、 当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。) をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

建築基準法第101条《改正》平16法111
 次の各号のいずれかに該当するものは、50万円以下の罰金に処する。

5.第12条第1項又は第3項(第88条第1項又は第3項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者


(事故後のニュース その5)(*4)

東京地検が業務上過失致死罪で起訴

  事故から3年たった2009年7月16日、東京地検は、製造元のシンドラーエレベーター東京支社(江東区)の元保守部長(57)、元保守部課長(40)の2人と、事故当時に保守点検を請負っていたエス・イー・シーエレベーター(台東区)の社長(66)、専務(50)、元メンテナンス部長(62)の3人の計5人を業務上過失致死罪で起訴した。

東京地検の判断
 東京地検は、「契約上、マンション管理者に安全にかかわる重要な情報を伝えるのは当然の義務であり、そうすれば次の業者にも伝わる」として、不具合情報を引継がなかった責任を厳格に捉えたと見られる。 起訴状によると

シンドラー社の2人は、
 @ 2004年に事故機で故障が発生した際、ブレーキパッドの磨耗を発見したのに応急措置を行っただけで原因を調査せずに放置した。
 A 2005年3月末で同機の保守点検業務を他社に引き継いだ際、マンション管理者の港区住宅公社に事故発生の危険性を伝えるのを怠った。
ことを起訴理由に挙げた。

 エス・イー・シーエレベーター(株)社の3人は、2006年4月から同社が事故機の保守点検を請負った際、同機種の保守点検の方法などを充分に調査せず、従業員に理解させないまま、保守点検を行わせた過失があったとした。

シンドラー社の反論
  シンドラー社は、ホームページ上で、2009年04月08日「弊社従業員及び元従業員の書類送検について」、 2009年07月16日「起訴事実に対する反論」を発表。
その中で、本件起訴は、十分な法律的理由に基づかない政策的な起訴であるとして反論している。さらに、本件事故後2006年6月10日にも、警察立会いのもとでブレーキを分解・再組立てをして検証したところ、ブレーキは安全に機能する状態になったと主張。

  さらに、シンドラー社のブレーキシステムは何ら特別な構造ではなく、世界中で使われており、保守会社であれば、そのメンテナンスは極めて容易であり、メンテナンスマニュアルがなければ、シンドラー社のブレーキシステムを適切にメンテナンスできないわけではない。要望があれば、シンドラー社は、独立系の保守業者に対しても、技術的な支援情報を提供してきたが、SECは、シンドラー社に対して、情報提供を要請してこなかった。
従って、SECは、シンドラー社のブレーキシステムを保守するのに十分な知識と技術を有していたと思われる。

 本件事故は、弊社の従業員の見落としや、情報を伝達しなかったことにより引き起こされたものではなく、SECにより保守の基本中の基本が励行されなかったことにより発生したものであると主張している。

保守点検の業界引継ぎルールは存在していない。
 公正取引委員会の報告書にもある通り、エレベーターの保守点検業務はメーカーと独立系の業者が仕事を奪い合って対立しており、保守点検に関しても業界内には不具合情報の引継ぎに関する明確なルールは存在していない。
 東京地検が再発防止のために起訴を通して業界内の情報の共有化の必要性を迫る事態となったが、公正取引委員会の摘発といい、今回の東京地検による起訴といい、監督官庁の国土交通省はフエアな業界のルール化には適応できない状況を見せ付けた。

  平成20年9月19日に建築基準法施行令の改正が公布され2009年9月28日から施行される内容の中で「戸開走行保護装置」(戸が開いて走行した場合にかごを止める装置)の設置が義務付けられ、2009年9月28日から設置されるエレベーターには、国土交通大臣の認定を取得した戸開走行保護装置を設けなければならないことになった。(泥縄式の対症療法)。
国土交通大臣の認定取得にあたっては、指定性能評価機関の行う性能評価を受ける必要がある。

建物管理者は責任を問われないか?
 エレベータ定期点検の報告書を見ればわかることですが、報告者、すなわち、定期点検報告書の監督官庁への提出者は建物管理者です。(実際には保守業者が作成から申請までを代行しているが、書類上の責任者は建物管理者。)
 保守業者を選定し、業務を契約し、保守業務を適正に行わせる責任は一義的には建物管理者にある。今回の事故の建物管理者が住宅公社であったことで、建物管理者の責任は問われなかったが、これが民間分譲マンションであれば、管理組合の理事長も責任を問われたかもしれない。国土交通省の昇降機等事故対策委員会が、2009年9月8日に発表した報告書でも、管理者の港区住宅公社は、シンドラー社から保守点検マニュアルの提供を受けていなかったこと、更に、不具合の発生率は都住宅供給公社のエレベーターの20倍、都市再生機構の90倍に達しており、「不具合への対応がきわめて不十分」として、保守点検業者に加え、管理者の不具合への反応の鈍さも問題視した。しかし、港区住宅公社の責任は問われなかった。管理者が民間であったなら、間違いなく処分の対象となったと見られる。 (*5)

シンドラーエレベータとSEC社:2カ月の指名停止 国交省が処分(*5)
 国土交通省は2009年9月2日、「シンドラーエレベータ」(東京都江東区)と保守管理会社「エス・イー・シーエレベーター」(台東区)をそれぞれ2カ月と3カ月の指名停止処分にした。対象は関東地方整備局と国土技術政策総合研究所が発注する工事.

2009年9月8日 国交省事故委が報告書を公表。
 事故から3年3ヶ月経った2009年9月8日、国土交通省の昇降機等事故対策委員会は、事故報告書を発表。(幾らなんでも遅すぎる!)
 事故を起こしたエレベーターは、ブレーキ部分が摩耗し、電流が流れにくい状態になっていて機能せず、死亡事故を引き起こした。さらに、事故機と隣接のエレベーターでは事故前の3年間に、停止位置がずれたり指定した階に止まらなかったりといった不具合が計35件発生。隣接機は事故後の5カ月でも29件の不具合が生じていた。
 事故対策委が原因を分析した結果、制御盤の電力変換装置と、作動プログラムを組み込んだコンピューターの位置が近すぎて、電気ノイズが生じ、不具合につながっていたことが判明。「設計上の問題があった」と指摘した。 


 (マンションNPO 昇降機検査資格者 2006/7/2掲載)
(*2)(2008年(平成20年)1月27日追記)
(*3)(2008年(平成20年)2月15日追記)
(*4)(2009年(平成21年)7月17日追記)
(*5)(2009年(平成21年)9月12日追記)

 

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