P 2 「エレベータの地震対策(第2章)」  マンションNPOホーム


地震のときエレベーターはどうなるか? その対策は?


第2章 地震のときエレベーターはどうなるか?
エレベーターがいつ設置されたかによって地震時の動作が異なります。

(設置時期 T:S46年以前 U S46〜S56年6月 V S56年6月〜平成11年4月 W 平成11年4月以後)

 
T:自主基準時代: (〜1972年(S46))
  1971年以前は公的耐震基準はなく、各メーカーが独自の耐震基準で設計していました。

U:旧耐震指針時代: (1972年(S47)〜1981年(S56))
  1971年(昭和46年)のアメリカ・サンフェルナンド地震において、つり合いおもりの脱レール、かごとおもりの衝突によるかごの大破等が生じたことを受けて、「昇降機防災対策標準」が定められています。

V:新耐震指針時代: (1981年(S56)〜1998年(H10 ))
  続いて昭和53年の宮城県沖地震で、我が国も都市型地震を始めて経験したのですが、エレベーター被害で最も多かったのが、つり合いおもり脱レール事故でした。
  この地震が契機となって、1980年(昭和55年)7月14日の建築基準法の改正により、昭和56年に、建築基準法施行令第5章の4第2節(昇降機)にエレベーターの地震対策が編入され、この施行令の施行にあわせて「エレベーター耐震設計・施行指針」が制定、昭和56年6月1日より適用されました。
  主な規定としては、(1)滑節構造の接合部がガイドレールから外れない(2)索が滑車から外れない(3)昇降路内に突出物を設けない(4)駆動装置及び制御器は転倒又は移動しないことを規定しました。
  S56年6月以後の新耐震指針対応エレベーターは揺れに対する巻上機などの転倒防止など機械的な耐震対策としてはより頑丈になっているのは確かですが、残念ながら、新法対応エレベーターでも閉じ込めは発生しており、地震対策付の最新のエレベーターに更新したから、絶対に安心という訳にはいかないのです。耐震対策は万全ではありません。

 S56年6月以前までの地震対策を施していないエレベーターは、地震時も行き先釦を押した階へそのまま運転し続けます。

メーカーでは、最新型への更新を勧める理由として「揺れが大きいとかごがレールから外れたり、ロープが滑車から外れたりして、かごが途中階に停止し、人が閉じ込められる恐れがあります。」といっています。地震時管制運転装置を設けることでこのような閉じ込め事故を減らせる事になるからです。

  (注1)東京都建築安全条例の昭和62年改正では地震時管制運転装置のほか、かごの戸を窓付きとすることが義務付けられています。(昭和63年2月1日施行)

東京都建築安全条例 

(共同住宅に設けるエレベーターの構造)
第七十八条 共同住宅に設けるエレベーターのかご及び昇降路の出入口の戸には、かごの中を見通すことができる窓を設けなければならない。ただし、安全上支障がない場合は、この限りでない。
2 共同住宅の用途に供する部分の床面積の合計が三千平方メートルを超える建築物で、五階以上の階に共同住宅の住戸又は住室があるものにエレベーター(荷物用のものを除く。次条において同じ。)を設ける場合は、一以上を奥行き(トランク付きのものにあつては、トランク部分を含む。)二メートル以上としなければならない。ただし、建築物の構造により居住者の安全上支障がない場合は、この限りでない。
(エレベーターの地震時管制運転装置)
第七十九条 五階以上の階又は地上十五メートル以上の階(停止階があるものに限る。)に通ずるエレベーターには、地震が発生した場合にかごを最寄りの階に安全に停止させることができる管制運転装置を設けなければならない。
(エレベーターの機械室等)
第八十条 エレベーターの機械室等は、次に定める構造としなければならない。
一 機械室に至る通路及び階段の幅は七十センチメートル以上とし、高さは一・八メートル以上とすること。
二 鉄骨造の建築物に設ける機械室及び昇降路の露出した主要構造部に施す防火被覆は、飛散しない材料及び工法とすること。
三 非常用エレベーターの機械室とその他のエレベーターの機械室とは、耐火構造の壁で区画すること。 

W:新・新耐震指針時代: (1998年(平成11年4月以後)〜)
  平成7年1月17日5時46分に発生した兵庫県南部地震(M7.2 震度階最大7)では、新法対応エレベーターと昭和56年以前に設置された同指針を適用していないエレベーターでは被害全体でみて、新法対応4,116台中1,490台(36%)、旧法対応2,416台中1,654台(68%)と明らかに差がでました。例えば、巻上機・MGの転倒は新:旧の被害台数比較で72:213台、制御盤の転倒は同17:47、ガイドレールの変形(かご側13:20 釣り合いおもり側38:116)などです。但しメインロープの外れは10:3、引掛り、絡み59:45と、新法対応のほうが被害台数が多いという結果になりました。

 この地震の後「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が平成7年12月施行されました。また、「エレベーター耐震設計・施工指針」の内容見直しも行われ「昇降機耐震設計・施工指針」として平成11年4月から適用されました。既に設置されている既設エレベーターに対しては、本指針の地震対策に準じた耐震改修を行うことが推奨されています。(新新耐震指針)

「建築物の耐震改修の促進に関する法律」第四条
2  所管行政庁は、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店その他不特定かつ多数の者が利用する特定建築物(中略)について必要な耐震診断又は耐震改修が行われていないと認めるときは、特定建築物の所有者に対し、前条の指針を勘案して、必要な指示をすることができる。 
(注)マンションは同法の義務化の対象にはなっていません。

ちなみに、エレベータに限らず、マンションなど非木造建築物に対する耐震診断・改修に対して自治体が支援制度を設けて助成していますが、それら助成の対象となる建築物の条件を「昭56年5月31日以前に建築確認を受け、基準法に適合している非木造の民間建築物」としているのは、上記施行令の施行前の建物に危険性が高いからです。

既設エレベーターを改修するポイントを「第3章 既存エレベーターの地震対策」に述べています。

地震時管制運転装置の動作
 地震時管制運転装置に使用する地震感知器は原則として下記の3段階に設定されています。
建築物の高さ (特低)設定値(gal) (低)設定値(gal) (高)設定値(gal)
60m以下 80又はP波感知 150 200
60m超〜120m以下 30,40,60又はP波感知 60,80又は100 100、120又は150
120m超 25,30又はP波感知 40,60又は80 80,100又は120

(注)1.急行ゾーンのない一般エレベーターは、 (特低)及び(低)の2段階とする。 昭和56年6月1日施行の建築基準法施行令適用以前のエレベーターで耐震改修をしていない既設エレベーターに地震時管制運転装置を設置する場合は、 (特低)60gal 又はP波感知 (低)100galを標準とする。

(参考) 地震波は主要動の大きな揺れ(S波 secondary wave=進行方向と直角に振動する弾性波)の前に、初期微動の小さな揺れ(P波 primary wave=進行方向に平行に振動する弾性波))が現れます。 ガル(gal)とは加速度の単位です。地震の場合、震源から発生した振動を伝える「地表最大加速度」を意味します。

  地震波にはさまざまな周期の波が含まれていますので、震度xが加速度幾らに相当するとは一概に決められません。参考までに仮に均一な波が同じ振幅で数秒間続くとした場合の図を示します。

(上の図は気象庁によるものです。クリックすると気象庁の画像にジャンプします。)


地震時管制運転装置の動作
1. 地震の特低感知器が動作すると地震時管制灯が点灯します。

2. 走行中のエレベーターは、自動的に最寄り階まで運転し、乗客が降りた後ドアを閉じて停止します。(急行ゾーンがあるエレベーターでは最寄階までの走行時間が長いので、10階床ごとに非常着床用の出入り口を設けています。
10秒程度の走行により着床可能なゾーンにない場合はエレベーターは非常停止します。)

3. 戸が全開になり、かご内照明が消灯し、“戸開”ボタンが点灯、15〜20秒経過後戸閉動作を開始します。
戸が全閉した後、かご内で戸開ボタンが押された場合には(3)を繰り返します。
乗客が降りた後、ドアを閉じて運転を停止します。

4. (低)感知器が動作していない場合、(特低)感知器を手動または自動リセットを行うことで平常運転に復帰します。

5. (低)感知器が動作し、更に(高)感知器が動作しなかった場合は、点検確認の必要性からエレベーターは自動復帰せず、運転休止を継続します。

6. (高)感知器が動作した場合は、非常停止するとともに“高”レベル灯が点灯し、管理人室に警報を出します。


強い地震(設定は概ね震度5弱以上)を感知して停止したエレベーターは、エレベーターがレールから外れている可能性もあるので、運転を休止したままになります。

地震検知センサーが動作してエレベーターが最寄り階に停止する動作中に、エレベーターが揺れによって、戸が開いた事を検出するスイッチが(戸が床と合う前であっても)動作してしまった場合には、急停止します。

(2005年7月23日千葉県北西部地震による閉じ込め78台中、50台がこのケースでした。)
このように、安全装置が動作すると急停止し、かごの中に人が乗っていた場合には、閉じ込められることになります。

保守会社にもよりますが、いたずらで押されて頻繁に呼び出されるのを防止するため、エレベータ機器からの故障警報装置が作動したことを示す信号とのAND条件でなければ、かご内のインターフォンを押し続けても通報が保守会社に伝わらないことがあります。
保守会社と遠隔監視契約をしているから安心ということにはなりません。大手であっても、このことを利用者に知らせていない保守会社もありますので、事前に確認しておいてください。

エレベーターが止まった場合には、止まった階にかけつけて、内部に人が閉じ込められていないかどうか確認し、人が閉じ込められていて、保守会社につながらない場合には、119番通報で消防署に救出の出動をお願いすることになります。

なお、共同住宅用エレベーターで内部から戸を手で開ける場合、子供ではあけられないように20kg以上の力が必要です。但し、かごが停止していない階の扉は専用の鍵(非常開錠用鍵)を用いなければ開けられないようにドアロックがついています。

走行中にかごの戸を開けるとブレーキが働いてエレベーターは停止します。戸を閉めて全閉位置の5cm以内まで閉めたとき、かごは動き始めます。


  また、かごが停止し、かつ動力が断たれたとき、戸に手をかけてこじ開けるために必要な力は5kg以上30kg以下と規定しています。 詳細はエレベーター保守会社におたずねください。



(マンションNPO昇降機検査資格者2005/8/18掲載 9/11 改訂)

 

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