P1  「エレベータの地震対策」; マンションNPOホーム


2005/7/23首都圏地震でエレベーター停止6万4000台、閉じ込め78件発生
-エレベーター内のインターフォンが繋がらない・・・・・-

地震時の不安や混乱を避けるため、地震時のエレベーターの運行について建物管理者、利用者に広く知って頂きたい内容をまとめました。 


第1章 

2005年7月23日 千葉県北西部地震の被害状況


7月23日16時35分, 千葉県北西部深さ 73kmを震源とするマグニチュード6.0の地震が発生し、東京都 足立区で最大震度5強を記録したほか、大田区、江戸川区、埼玉県草加市、鳩ヶ谷市、八潮市、三郷市、千葉県市川市、船橋市、浦安市、木更津市、神奈川県横浜市、川崎市などで震度5弱を記録しました。
地震による死者はありませんでしたが、37名の負傷者と3棟の建物火災が発生したほか、ライフライン関係では東京電力管内 6,039戸の停電、(7/23 17:38解消)千葉県内430戸の断水(7/23 23:15解消)が発生しました。

今回の地震でクローズアップされたのがエレベーターの被害でエレベーター保守管理会社大手5社において、合計で約64,000台のエレベーターが地震時管制運転装置の作動により停止しました。この中で、エレベーター閉じ込めが78件(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の合計-国土交通省調べ)、消防庁が119番出動で救出した閉じ込め事例も46件(都内22件、千葉県8件、埼玉県2件、神奈川県14件)発生。その他、
東京都庁舎(第一本庁舎)では展望室直行のエレベーターが自動停止し、地上45階の展望室にいた約200名が、約1時間半に渡って降りられなかったという事態も発生しています。

ほとんどが、途中階で緊急停止装置が優先作動したものですが、復旧に要した時間は
閉じ込め最長3時間5分(埼玉県草加市6階建てマンション)の例もあるほか、2時間以上が8件発生し、保守会社に緊急通報がつながらなかった最長時間江戸川区11階建て85分(国土交通省調べ)、新宿区5人乗りでは最大3時間50分(消防庁調べ)の例も発生しています。

地震管制運転システムを採用しているエレベーターでは、強い地震の際には止まったままになり、保守員が安全を確認してリセット(復旧作業)しない限り動きません。

専門技術者(昇降機検査資格者)の数は平成17年度現在、全国で27,810人、エレベーターの稼動台数は約65万台ですから、全国平均で技術者一人あたり、23台のエレベーターの保守を行っていることになります。
広域で一斉にエレベーターが止まるような事態になりますと、保守会社には、緊急を要する閉じ込め救出作業以外にも閉じ込めが発生していない場合のリセット作業で出動要請が殺到し、電話回線がパンクして繫がらなくなります。

平成17年(2005年)10月28日10:00〜12:00に国土交通省4階特別会議室で開催された社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会(第三回)の中間答申では『エレベーターの地震防災対策に関する対応方針(案)について』が公表されています。

この中では、エレベーターの耐震安全性の確保、「地震時管制運転装置」の確実な作動、早期救出・復旧体制の整備等、適時適切な情報提供、エレベーターの地震防災対策に関する対応方針(案が示され、P波感知型地震時管制運転装置やリスタート運転機能、自動診断・復旧システム(仮称)の付加、「1ビルごとに1台のみ復旧」による効率向上、エレベーター保守会社の車両走行を緊急通行車両とするよう関係機関と調整を行う事などが提案されています。 

また、現行の保守の実態についても報告され、大手5社(東芝エレベータ(株),日本オーチス・エレベータ(株),(株)日立製作所(保守は(株)日立ビルシステム),三菱電機(株)(保守は三菱電機ビルテクノサービス(株)),フジテック(株)に於いても2005年度現在、700種を超える機種があり、これらの装置、部品及び工具等に関する規格がなく、ライフサイクルの平均が約30年と長く、古い機種が残っていること、復旧作業に必要な運転操作方法等が会社ごとであり、同じ会社でも年代ごとや機種ごとに違う為、保守員の事故に繋がる恐れが大きい事、誤操作により機器損傷を引き起こす可能性があること、それに伴うユーザーへの補償を要する可能性も考えると、教育・訓練には多大の時間が必要であり、日頃の保守経験が技術習得のために大きな要素を占めているが、しかし技術習熟度が低い為に総合効率は落ちる可能性が高いとしています。

復旧には時間がかかることから、住民によるリセット作業などができるといいように思われますが、但し二次災害を引き起こす危険があり、エレベータリスタート運転機能の付加にはハード面でのフェイルセーフやフールプルーフの機能以上に、実施体制、充分な教育訓練の担保といった管理面での総合的な課題があります。


国土交通省にて社会資本整備審議会が開催された同日の夕方、内閣府主催での防災局長会議が開催されています。

平成17年(2005年)10月28日16:00〜17:00内閣府防災A会議室にて都市型震災対策関係省庁局長会議を開催。「議題:都市型震災に対する防災対策推進のため検討すべき課題及びその対策について」

(1)「閉じ込め防止」対策として地震時管制運転装置(地震動を感知し最寄階にかごを停止させドアを開放する装置)について、義務化の方向で早急に関係法令を改正する。
既存のエレベーターについても、地震時管制運転装置を推奨し、普及啓発を図るとともに、必要な支援策を講ずる。(国土交通省、文部科学省、厚生労働省、内閣官房、内閣府)

(2)「早期復旧」対策として 関係団体と連携しながら早期復旧に向けた技術的課題等を整理し、必要な対策を図る。(国土交通省)

(3)「混乱防止」対策として 不安や混乱を避けるため、地震時のエレベーターの運行について建物管理者、利用者に広く周知する。(国土交通省)

(4)「エレベーターの解錠手段の確保」対策としてエレベーター解錠手段の確保の方策について、エレベーター協会等との間で検討を実施する。(消防庁)

(5)「緊急地震速報のエレベーター制御への活用」としてエレベーター業界における緊急地震速報の利用にあたっての手引き、同速報配信形態の検討を行う。(気象庁、国土交通省、内閣官房、内閣府)

等の方針を打ち出しています。

(マンションNPO解説ー緊急地震速報ー)
地震波は大きな揺れ(S波 secondary wave)の前に、最初の小さな揺れ(P波 primary wave)が現れます。  このP波(秒速約6〜7km)は伝わる速度がS波(秒速約4km)よりも速く、遠距離の場合、P波を感知してから、S波がくるまでに数十秒の差がでることがあります。例えば2005年 8月16日(火)11時46分25秒に宮城県牡鹿半島沖深さ約42kmを震源とするM7.2の地震が発生 最大震度は6弱(宮城県川崎町)。この地震で緊急地震速報システムが情報提供して主要動が来るまでの時間は仙台で16秒、川崎町で22秒でした(気象庁発表)。 震源地が遠距離の場合は有効ですが、直下型の地震の場合は間に合いません。その他 様々な課題があります。


緊急地震速報は平成16年度より気象庁が試験運用に入っているもので、平成17年度にはナウキャスト地震計の全国整備を完了し、試験運用対象地域を拡大する予定となっています。

(マンションNPO 昇降機検査資格者2005/8/18掲載

 

 

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